n個の元をもつ有限集合Aは、その元に番号をつけて、{a0, a1,……, an-1}と表すことができる。これは、集合Aの元と、nより小さい自然数の集合{0, 1,……, n-1}との間に、並べ方(順序)を含めて互いの元がちょうど一つずつ対応するようにしたものである。これらの集合の順序数はnであるという。空集合の順序数は0と定める。順序数とはこのように、集合の元に一定の順序で番号づけを与えたときの、その集合の順序の型を与えるもので、この概念を無限集合にまで広げたものである。
自然数全体の集合{0, 1, 2,……}は、大小の順序で最大元がない。この集合の順序数をωと表し、最小の無限順序数といい、各自然数nに対してn<ωとする。ωより大きい順序数として、
ω+1,ω+2,……,ω+ω(=ω・2),……,ω+ω+……(=ω・ω=ω2),ω2+1,……,ω3,……,ωω,……
などがある。これらはそれぞれ、自分自身より小さい順序数全体の集合の順序数を表すので、順序数と、それより小さい順序数全体の集合を同一のものと考えると便利である。すなわち、
ω={0, 1, 2,……}
ω+1={0, 1, 2,……,ω}
ωω={0, 1, 2,……,ω,ω+1,……,ω2,……,ω3,……}
である。これらの集合は、どの二つの異なる元についても、一方は他方より大きく、さらに、その部分集合にも最小の元がある。このように、集合Aのどの二つの元の間にも順序がついていて、しかも、どの部分集合にもこの順序で最初の元があるとき、Aはこの順序で整列集合であるという。順序数は整列集合であるが、{……,-2,-1, 0, 1, 2,……}は最小元がないので整列集合ではない。整列集合は、その順序を順序数の大小関係と対応させると、その順序を保ったまま、ある順序数と互いにちょうど一つずつの元を対応させることができる。したがって、順序数は整列集合の順序の型を表すということができる。{1, 3, 5,……, 2, 4, 6,……}は左から右への順序で整列集合で、順序数
ω・2={0, 1, 2,……,ω,ω+1,ω+2,……}
と同じ型で、その順序数はω・2である。また、ω番目、(ω+1)番目の元はそれぞれ2、4である。
[西村敏男]
ふつう番号をつけるときは1,2,3,……と自然数で番号をつけるが,数学ではもっと多くの番号が必要になることがある。そこで,自然数全体の次にwを考え,そのあとw+1,w+2,……,2w,2w+1,……というような番号づけが考えられる。そのように一般化した番号を順序数という。w,2wのように,それより小さいものはあるが,直前のもののない順序数を極限数という。
正確には,整列集合(〈集合〉の項目を参照)の集りを考え,整列集合の型を順序数と定義し,二つの整列集合WとUとについて,Uのある元uによる{x∈U|x<u}とWとが同じ型であるとき,Wの型を表す順序数がUの型を表す順序数より小さいと定義する。なお,n(<∞)個の元からなる整列集合の型をnで表すことにしているので,順序数は0(空集合の型)から始まる。整列可能定理によれば,どんな大きい濃度についても,その濃度をもつ整列集合がある。
執筆者:永田 雅宜
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…〈どんな集合Mに対しても,それに適当な順序を与えて整列集合にすることができる〉。
[順序数]
一般に二つの順序集合M,Nが同型であるとは,MからNへの1対1対応(全単射)fであってa>b⇔f(a)>f(b)の成り立つものが存在するときにいう。例えば,自然数全体の集合Nを考えると,{2n|n∈N}とNは同型であり,NとN×N(辞書式順序による)とは同型ではない。…
※「順序数」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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