足芸(読み)アシゲイ

デジタル大辞泉 「足芸」の意味・読み・例文・類語

あし‐げい【足芸】

あおむけに寝て、足だけでする曲芸たるたらいなどを回したりする。足業あしわざ

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精選版 日本国語大辞典 「足芸」の意味・読み・例文・類語

あし‐げい【足芸】

  1. 〘 名詞 〙 足をいろいろに使ってする曲芸。仰向けに寝て、足をあげてする場合が多い。
    1. [初出の実例]「近ごろ足芸といふもの、難波より来りて処々にて観せ物に出す」(出典:随筆・筠庭雑考(1843)四)

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改訂新版 世界大百科事典 「足芸」の意味・わかりやすい解説

足芸 (あしげい)

足で文字を書いたり,矢を射たりする芸当。しかし世界に名をとどろかせた日本の足芸は,力持ちの要素も加えた別種の曲芸である。すなわち,あおむけに寝て両足を高く差し上げた演者太夫)が,足底にはしごやたるを乗せる。そこへ5~8歳の若太夫が登って,各種の演技を見せた。この足芸は1820年代(文政年間)から江戸や上方で盛んに行われ,大坂の鉄割弥吉は〈足芸元祖〉として広く知られた。早くに海外を巡演した者も多く,たとえば江戸新吉原に住む浜碇定吉は,1867年(慶応3)にアメリカを経由してパリ万国博覧会へ出演。一方京都の早竹虎吉は,1866年に渡米して68年に没。その弟が2世虎吉を継ぎ,74年に東京で大評判をとった。こうした足芸師の活躍は,87年,ハワイのホノルルで大成功を収めた大浦組の報道を最後にとだえてしまう。衰滅の原因には,都市の整備,義務教育の普及,遊芸蔑視(べつし)の風潮などがあげられる。
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「足芸」の意味・わかりやすい解説

足芸
あしげい

曲芸の一種。曲持(きょくも)ちとも称される。あおむけに寝て足を上げ、その足の裏でいろいろな品物を操ったり、足の指を器用に使って文字書き、射弓、切抜き細工、楽器演奏などをしたりする。正徳(しょうとく)・享保(きょうほう)(1716~1736)ごろの『文字絵尽(づくし)』にもみえる。文化(ぶんか)・文政(ぶんせい)(1804~1830)ごろに名古屋の岩本梅吉をはじめとする名人が出現して流行した。開いた傘を水車のように回したり、石、俵、樽(たる)、たらいなどの品物や、ときには人間を載せて回したり、高く蹴(け)上げたりした。嘉永(かえい)(1848~1854)ごろに有名だった鉄割(てつわり)熊蔵(のちに弥吉(やきち))一座の『葛(くず)の葉障子(しょうじ)の曲』は、ほぼ同じ構成で木下サーカスに受け継がれている。1866年(慶応2)にヨーロッパに渡った日本最初の曲芸団にも足芸師浜碇(はまじょう)定吉が参加している。上海(シャンハイ)雑伎(ざつぎ)団や外国のサーカスにもみられる。

[織田紘二]

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世界大百科事典(旧版)内の足芸の言及

【曲芸】より

…〈力持〉は,100貫目(375kg)以上もある大石を持ち上げたり,その石でろうそくの火をあおいで消したりしたといい,女太夫の力持ちも出現した。〈曲持〉は,あおむけに寝て足を上げ,その足の裏で石や俵,樽,たらい,ときには人間を乗せてくるくる回したり,高く蹴上げたりする芸で〈足芸〉とも呼ばれる。〈曲独楽〉のように現在に多少は残った芸もあるが,そのほとんどが消滅した。…

【サーカス】より

…続いて71年(明治4)フランスのスリエ,86年イタリアのチャリネ曲馬師のサーカスが渡来し,西洋曲馬,西洋軽業や,象とトラの演芸,空中ぶらんこなどを演じた。それまでの日本の軽業足芸曲馬などの見世物は,それぞれが芸種別の一座を組み個々の興行形態であったのに比べ,外国のサーカスは規模も大きく,芸種も豊富であったので大評判を呼んだ。とりわけ在来の日本曲馬は,曲乗りも演じていたものの,歌舞伎芝居を馬上で演じるおうような曲馬芝居(馬芝居)が主演目であったので,そのスピード,スリルのある軽業的曲乗りに圧倒された。…

【見世物】より

…享保期(1716‐36)以後には曲馬,女角力(おんなずもう),綱渡りなど,宝暦・明和・安永期(1751‐81)には火喰い坊主,蘇鉄(そてつ)男,馬男,曲独楽(きよくごま),曲屁(きよくへ)福平,女力持(ちからもち),エレキテル,鬼娘,飛んだ霊宝,ビイドロ細工,曲鞠(きよくまり)などが行われた。 そして寛政(1789‐1801)以後には,駝鳥(だちよう),大鱶(おおふか),水豹(あざらし),足芸,飴(あめ)の曲吹き,おどけ開帳,謎解き春雪,芸州宮島大鳥居回廊,祇園会山鉾,籠細工釈迦,壬生(みぶ)狂言,ビイドロ細工阿蘭陀船,珍貝細工,羽二重細工,桶細工その他細工物,看々(かんかん)踊,唐人蛇踊,百人芸,生人形,駱駝(らくだ),山男,蛇娘,菊細工,大象,翻車魚(まんぼう),餅曲搗き(もちのきよくづき),水からくり,譬くらべ,眼力など,種々雑多な見世物が行われた。また福招きの人形として知られる〈叶(かのう)福助〉の流行にのって,文化1年(1804)春には,生福助の見世物が最も人気があった。…

※「足芸」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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