つわり(その他表記)vomiting of pregnancy

精選版 日本国語大辞典 「つわり」の意味・読み・例文・類語

つわりつはり

  1. 〘 名詞 〙 ( 動詞「つわる」の連用形の名詞化 )
  2. 芽が出ること。芽ぐむこと。
    1. [初出の実例]「つはりせしふたこの山のははそ原よにうみ過て消えぬべきかな」(出典:散木奇歌集(1128頃)雑)
  3. ( 悪阻 ) 妊娠二~四か月からみられる消化器系統の症状。空腹時の吐き気や軽い嘔吐(おうと)のほか、食欲不振や飲食物に対する嗜好の変化などがみられる。妊娠嘔吐。つやつや。〔新撰字鏡(898‐901頃)〕

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家庭医学館 「つわり」の解説

つわりにんしんおそ【つわり(妊娠悪阻) Morning Sickness】

[どんな病気か]
 妊娠5~6週前後からみられる悪心(おしん)(吐(は)き気(け))、嘔吐(おうと)、嗜好(しこう)の変化、唾液(だえき)(つば)の増加などの症状を総称して「つわり」といいます。
 つわりは、その程度はさまざまですが、全妊婦の80%近くにみられ、経産婦(けいさんぷ)より初産婦(しょさんぷ)に多く、また、双胎(そうたい)(ふたご)や胞状奇胎(ほうじょうきたい)(「胞状奇胎」)の場合には、とくに強く現われるとされています。
 一般には、妊娠15週くらいでおさまってくることが多いのですが、人によっては、妊娠末期まで続く場合もあります。
[原因]
 妊娠により、性腺刺激(せいせんしげき)ホルモンのヒト絨毛性(じゅうもうせい)ゴナドトロピン(hCG)が急激に増加し、体内のホルモン環境が大きく変化することによって、自律神経の失調がおこることが大きな原因と考えられています。しかし、その詳しいメカニズムは、まだ明らかにされていません。
[症状]
 吐き気、嘔吐は早朝の空腹時に多くみられます。その他の症状としては、唾液の分泌亢進(ぶんぴつこうしん)や嗜好の変化、全身の倦怠感(けんたいかん)を訴えるものも少なくありません。また、脱水による皮膚の乾燥や、動悸(どうき)、乏尿(ぼうにょう)、不眠などがみられることもあります。
 重症になると、意識障害、肝臓・腎臓(じんぞう)障害をきたす場合もあります。
[検査と診断]
 つわりそのものは、生理的なものであることを、まずは理解することが必要です。
 しかし、強いつわり症状を示すもののなかには、胞状奇胎などの異常妊娠の場合もありますので、正常な妊娠経過かどうか、超音波検査や尿中ホルモン検査により、チェックしてもらうことが必要です。
[治療]
 強いつわりの場合には、体重が減少し、尿量も少なくなってきます。この場合には、体内の電解質バランスがくずれてくるため、点滴治療が必要となります。
 一般的な目安としては、食事をすべて受けつけない、1日5回以上嘔吐がある、尿中にケトン体(絶食状態や糖尿病などの代謝異常症では、体内の代謝産物が尿中ケトン体となって出現してくる)がみられる、38℃以上の発熱があるなどの症状がみられた場合には、入院する必要があります。
●つわりの対策
 軽度のつわりの場合には、食事の内容や回数を工夫したり、気分転換をはかることで軽くなることもあります。
 食事の内容としては、温かいもの、においの強いものをできるだけ避けます。食事の回数は、1日5~10回に増やし、1回の量を少なくすることも重要です。
 この時期は、胎児(たいじ)に対する栄養のことより、自分がいかに楽に過ごせるかを考えて、食べられるものを中心に食事をとることが肝要です。
 つわりは、妊娠を自覚させるための生理的なもの、というくらいに考えて、ゆったりした気分ですごすこともたいせつです。
 なにかに熱中するなど、気分転換をはかるのもよいことです。

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改訂新版 世界大百科事典 「つわり」の意味・わかりやすい解説

つわり
vomiting of pregnancy

妊娠早期にみられる嘔吐を中心とする症状をいい,妊娠嘔吐ともいう。食欲不振,嗜好の変化,胸焼けに続いて吐き気(悪心)が起こり,嘔吐するようになる。吐き気,嘔吐は早朝空腹時に起こることが多く,英語ではmorning sicknessともいい,二日酔いに似る。食欲不振,吐き気などは心因性のものが多く,嗜好物の変化を伴い,好物の摂取によって吐き気がおさまることもある。また嘔吐後には気分がさっぱりして食欲がでることもある。つわりは妊娠第2月ころからあらわれ,1~2ヵ月間持続して妊娠第4月ころには軽快ないし消失するが,ときには妊娠末期まで続くこともある。妊娠の過半数ないし80%にもみられ,経産婦より初産婦に多い傾向があり,神経質な婦人に多い。つわりの原因としては,心因,ホルモンの作用,物質代謝の変調,自律神経失調などがあげられるが,いまだ不明である。つわりは生理的なもので,特別の治療を必要としない。ときには実家への帰宅,転地などの気分転換が好影響を及ぼす。また胃腸薬,少量の鎮吐薬,神経安定剤を用いることもある。しかしサリドマイドの例にもあるように,妊娠第5~9週の器官形成期は奇形を起こしやすい臨界期であるので,薬剤の摂取には慎重を要する。薬剤には多少の副作用があると考えるべきで,本来の疾病の影響,薬剤の効果とのバランスの上にたって決定すべきであろう。

 妊娠悪阻は,つわりが悪化し,栄養障害などの全身的障害を起こすに至ったものをいう。妊娠悪阻の頻度は0.3%であり,つわりと同じく妊娠第2,3月ころに多い。成因は不明であるが,子宮の増大による自律神経障害,ホルモンの変動説などがある。肝臓および自律神経機能障害,代謝異常,体液バランスまたはホルモンの失調,栄養障害がみられる。妊娠悪阻は妊娠中毒症の早期症状とされていたが,現在では妊娠中毒症は妊娠後期にのみ発現するものと考えられ,妊娠悪阻は妊娠中毒症からははずされるに至った。症状により3期に分けられる。妊娠悪阻の第1期は嘔吐を主徴として,食物がとれなくなり,脱水,飢餓などの全身症状を起こす。第2期は,これに中毒症状を合併したもので,体重減少,皮膚乾燥,口臭,黄疸,脈拍細小頻数,血中残余窒素の増加などが起こる。第3期になると脳・神経症状を起こし,頭痛,めまい,不眠,視・聴覚障害を訴え,嗜眠,昏睡に陥り,ときには死に至ることもある。しかし最近の悪阻は第3期になるものはほとんどない。

 治療法としては,安静,精神療法,絶食,輸液,電解質調節,クロールプロマジン,トランキライザーなどの鎮静剤などが用いられる。絶食は有効で,その後に補液,栄養補給が行われる。各種の治療によっても症状が好転しない場合には,人工妊娠中絶もやむをえない。
妊娠中毒
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日本大百科全書(ニッポニカ) 「つわり」の意味・わかりやすい解説

つわり

妊娠が原因となって妊娠初期に発症する消化器系の症状を中心とした症候群を一般に「つわり」とよんでいる。すなわち、予定月経の発来がみられずに7~14日過ぎた妊娠五週ころから、食欲不振、気分や嗜好(しこう)の変化、唾液(だえき)分泌の亢進(こうしん)、夜間など空腹時の悪心(おしん)や嘔吐(おうと)などがみられるものをいい、全妊婦の60~80%に発症するといわれる。発症の機序は不明であるが、妊娠時の内分泌環境、とくに妊娠初期に大量に分泌される絨毛(じゅうもう)性ゴナドトロピンをはじめ、妊娠に伴う情動障害や不安などの心理的因子などが要因として考えられている。

 つわりの症状には、前述のほかに、胸やけ、心悸(しんき)亢進、不眠などもあり、通常では気にもならないにおいに極度の嫌悪を感ずるなど、嗅覚(きゅうかく)をはじめ、聴覚、味覚、視覚などの感受性亢進もみられる。普通は妊娠14~16週ころまで続いて軽快するが、妊娠期間中続くこともある。

 一般に、つわりの重くなったものを妊娠悪阻(おそ)とよんでいるが、つわりと妊娠悪阻との間に明確な一線が画されているわけではない。通常、妊娠4か月以上になっても症状が軽快せず、しだいに強くなって衰弱などの全身症状が顕著となり、ついには生命に危険を及ぼすような場合を妊娠悪阻といい、妊娠中毒症の一つとして早期妊娠中毒症とよばれたこともある。

 つわりに対しては、妊娠による症状であることをよく理解したうえで、食事は1日3回にこだわらず、消化のよい栄養に富んだものを少量ずつ数回に分けてとるほか、肉体的、精神的安静を心がけ、排便や排尿を調整する。また、一般にこの時期の妊婦は神経質になり、感情も不安定になりがちであるから、環境を調節するとともに、気持ちをゆったりと保つように努力するほか、神経的な作用も大きいので、病人のように思い込んだり、つわりを意識しすぎないほうがよい。なお、妊娠悪阻の場合は医師に相談して適切な処置をとるが、重症例では入院治療が必要となる。

[新井正夫]

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百科事典マイペディア 「つわり」の意味・わかりやすい解説

つわり

妊娠嘔吐(おうと)とも。広義の妊娠中毒症の一種。妊娠初期に起こる悪心(おしん),嘔吐,食欲不振,嗜好(しこう)変化などの症状をいう。早朝空腹時に症状が強く現れることが多い。普通,妊娠第6週前後から起こり,6〜8週間継続して12〜16週には自然消失するが,妊娠全期間中継続する場合もある。症状が病的な場合は悪阻(おそ)という。原因は妊娠胎盤の絨毛(じゅうもう)から分泌される性腺刺激ホルモンが関係していると考えられる。その他,自律神経や肝臓機能の変化,精神状態なども影響する。神経質にならず自然に消失する時期を待つのがよいが,極度の重症では精神療法や人工妊娠中絶を必要とする。
→関連項目出産予定日想像妊娠

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妊娠・子育て用語辞典 「つわり」の解説

つわり

妊娠中のむかつきや吐き気、嘔吐、食欲不振など不快な症状の総称です。妊婦さん10人のうち8人までが経験するといわれています。始まるのは平均で妊娠5-6週ころで、多くの人は妊娠4か月ごろまでにおさまります。体が妊娠に適応しようとして起こる自然現象と考えていいでしょう。でも、何も食べられず水分もダメというときは妊娠悪阻の心配もあります。がまんせず、主治医に相談してください。

出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報

栄養・生化学辞典 「つわり」の解説

つわり

 妊娠6週間頃から特に早朝に悪心,嘔吐などの症状を呈すること.通常妊娠12週ほどになると軽快する.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「つわり」の意味・わかりやすい解説

つわり

妊娠悪疽」のページをご覧ください。

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世界大百科事典(旧版)内のつわりの言及

【妊娠】より

…40歳以下の妊婦で最大血圧140mmHg,最小血圧90mmHg以上の場合は妊娠中毒症などが考えられ,医師の診察が必要となる。(c)消化器の変化 妊娠第6週ころから妊娠嘔吐いわゆる〈つわり〉がみられる。つわりは一般に約1ヵ月半続き,第3~4ヵ月ころに消失するが,約60%の妊婦にみられる。…

※「つわり」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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