日本大百科全書(ニッポニカ) 「身欠きにしん」の意味・わかりやすい解説
身欠きにしん
みがきにしん
ニシンの素干し。伝統的な食品で、江戸時代松前藩から幕府へ献上された。かつてニシンが豊漁であったころは一本採り身欠きといい背肉の部分だけを用いたが、ニシンが不漁となったので、いまでは二本採りといって腹側の部分も切り落とさず身欠きにしている。ニシンのえら、内臓、生殖巣などを除き水洗い後2~3日乾かし、尾の部分から頭部にかけて背を開き、背骨をとり、20~30日間天日乾燥し製品とする。現在は乾燥機または天日乾燥との併用によるものが多い。干し上がったものは腹側の肉のごく一部を除き形を整える。
[金田尚志]
調理
完全に乾かしたものより生(なま)干しがうまく、蒲(かば)焼き、煮つけ、昆布(こぶ)巻き、昆布・大豆と煮る北海煮などに向く。京都のにしんそばは名高い。長期間貯蔵したものは灰汁(あく)につけるといがらっぽい味が抜けるとされているが、これは貯蔵中に含有油脂が酸化し、遊離のオキシ酸が生成したためで、灰汁のアルカリが結合するとせっけんになり、水溶性となって溶出するためである。
[金田尚志]