軍備規制(読み)ぐんびきせい(英語表記)regulation of armaments

日本大百科全書(ニッポニカ) 「軍備規制」の意味・わかりやすい解説

軍備規制
ぐんびきせい
regulation of armaments

国際連合憲章第26条にある用語。国際連盟規約は、第8条で軍縮disarmamentという用語を使用していたが、国連は、平和維持のために五大国を中心として軍事力を利用する集団安全保障体制をとったため、軍縮という用語を避けたようである。しかし、憲章第26条の前段の「世界の人的及び経済的資源軍備のために転用することを最も少なくして国際の平和及び安全の確立及び維持を促進する」という表現からもわかるように、軍備規制も基本的には軍縮を目ざす考え方といってよい。

 第二次世界大戦後も、主要国は当初軍縮を目的として審議交渉を行った。しかし、1950年代なかばごろからは、直接軍縮に結び付かないような各種の、いわゆる部分的措置に関する話し合いが中心になった。国連ではこれを軍縮の「副次的措置」と表現するが、アメリカではアームズ・コントロール軍備管理と訳されることが多い)という用語が使われるようになった。

 この用語は、今日では非常に広い意味に使われているとはいえ、歴史的には、米ソが核戦争回避などを目的として核軍備増強競争を調整する措置をさした用語であった。その意味でアームズ・コントロールは核抑止戦略と切り離せない概念であり、軍縮の意味するところとは非常に異なっている。現代では、国際関係の多様化、複雑化と兵器技術の急速な進歩が重なり合って、軍縮問題の範囲を著しく拡大する傾向が認められる。このことは、たとえば信頼醸成措置CBM)が軍縮問題の一環として議論されていることによく示されている。これに伴って軍縮に関連する用語もいくぶん混乱を含みながら多様化しつつあるといえる。国連憲章第26条の「軍備規制」は、軍縮への方向づけをもちながら、その他の軍縮に至らない各種の措置を包含しうる点で重要な概念であるが、概念の定義、それを用いた軍縮問題の体系的分析方法の確立は遅れている。

前田 寿・納家政嗣]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の軍備規制の言及

【軍縮】より

…軍縮に相当する〈軍備削減reduction of armaments〉という観念が広く国際的に正当性を認められたのは,国際連盟規約8条においてであった。これに対して国際連合憲章では〈軍備規制regulation of armaments〉という概念に重点がおかれている(11条,26条)。こうした違いは,第1次大戦の場合には,それに先立つ軍拡競争が戦争の大きな原因になったという認識が,大戦終結・国際連盟発足当時に広く受けいれられていたのに対し,第2次大戦の場合には,ファシズム諸国に対抗して民主主義諸国が十分に軍備を増強しなかったことが戦争を誘発した,という考えが支配的であったことを反映している。…

※「軍備規制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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