農家益(読み)のうかえき

日本大百科全書(ニッポニカ) 「農家益」の意味・わかりやすい解説

農家益
のうかえき

農学書。大蔵永常(おおくらながつね)の処女作。天地人三巻からなる。1802年(享和2)刊。天之巻では為政者副業の利を勧め、地之巻ではハゼ栽培、人之巻では製蝋(ろう)を説く。この書は、それより50年前に出された高橋善蔵の『窮民夜光珠(たま)』を手本に書かれた。1810年(文化7)に後編二巻、また1818年(文政1)に続編二巻が出ているが、後続編は、ハゼの苗木仕立て、接木(つぎき)などについて、彼自身の研究を詳述している。接木については蘭学(らんがく)の影響があるとされる。なお、文化(ぶんか)7年の版で、彼は、その後彼が刊行したすべての本の全体を見通した構想を記している。

[福島要一]

『山田龍雄他編『日本農書全集15 除蝗録・農具便利論・他』(1977・農山漁村文化協会)』


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改訂新版 世界大百科事典 「農家益」の意味・わかりやすい解説

農家益 (のうかえき)

幕末の農学者大蔵永常の処女作。全3巻。1802年(享和2)刊。九州に多かったハゼノキの植樹栽培方法と,その実から蠟をとる加工技術を説明し,これを全国に普及しようと,工芸植物としての利点を強調した内容である。その素材は永常自身の九州各地での体験,見聞と,高橋善蔵著《窮民夜光珠》(1747)から得られた。好評で版を重ね,永常はこの成功により,農書著述を職業とするにいたった。後編(1810)および続編(1854)も書かれている。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「農家益」の意味・わかりやすい解説

農家益
のうかえき

江戸時代後期の農学者大蔵永常の書いた農学書。7巻。前編3巻は享和2 (1802) 年,後編2巻は文化8 (11) 年,続編2巻は文政1 (18) 年に成立。はぜの栽培や製ろう技術など,特用作物の栽培とその加工法が詳しく述べられている。

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