辻は通常には道が十文字になっている所をさすが、そればかりでなく、山の峠を辻という地方もある。四つ辻や峠やまた村境といった所は、外部から入ってくるものを防ぎやすい所である。それで、古くはそこへサエ(塞)の神を祭り、日を定め、また臨時にもこれを祭った。これが辻祭である。『延喜式(えんぎしき)』には障神(さやるかみの)祭や蕃客送堺神祭(ばんかくをさかいにおくるかみのまつり)の規定がある。『明月記』には、辻祭が盛大に行われ、田楽(でんがく)なども催されたようすが記されているが、これは場所が都であって、祭りが風流(ふりゅう)化したためであろう。近代に入ってからでも、関東・中部地方の村々では、悪疫が流行すると村境に注連(しめ)を張り、祈願をする風が少なくなかった。これを多くは「辻切り」といっていた。
[石塚尊俊]
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