追込(読み)おいこみ

精選版 日本国語大辞典 「追込」の意味・読み・例文・類語

おい‐こみ おひ‥【追込】

〘名〙
① 一定の場所に人や動物などを追い立てて入れること。追い入れること。追い込むこと。また、そのための場所。
能狂言トメの一つ。舞台から橋懸(はしがかり)へ逃げて行く者を「やるまいぞ、やるまいぞ」と追いかけて幕にはいるもの。おいこみどめ。
※虎明本狂言・饅頭(室町末‐近世初)「やるまいぞやるまいぞといふておいこみにもする」
定数をきめず人を詰めこむこと。一つの場所におおぜいの雑多な客を入れること。また、その場所。料理屋の広間や、浴場の混浴など。
※雑俳・花もん日(1729)「追込の長湯はおそれ有馬山」
④ (「おいこみば(追込場)」の略) 特に劇場などで、観客をつめられるだけつめこむ、低料金の見物席。また、そこにいる観客。おいこみば。おいこみさじき。おおいりば。
※俳諧・独吟一日千句(1675)第一〇「つゐにゆく道をあけたる小分別 能の畳はかりきり追こみ」
刑罰の一つ。一定の部屋に入れて出入りを禁ずること。押しこめ。めしこめ。
⑥ 下等の遊女。自分の部屋を持たないで、雑居しているところからいう。
※俳諧・本朝文選(1706)六・箴類・飲食色欲箴〈許六〉「追込(ヲイコミ)辻君のたぐひは、匂ひ曾(かつ)て定まらず」
⑦ 花札で、三人以上で行なうとき、親(胴)、ナカ(胴中)、ビキの三人が勝負に出たので、他の者は出たくても出られなくなること。
⑧ 編集・印刷関係で、行またはページを改めないで、前にすぐ続けて活字を組んでいくこと。また、新聞や雑誌で、そのような組み方をする、あまり重要でない記事。べたぐみ。
※神経病時代(1917)〈広津和郎〉一「明日のおひこみを三段ばかり工場に廻しといて呉れ給へ」
⑨ 相場が下落すること。また、売りたたいて相場を下落させること。
競争、試験などで、勝敗の決まる最終段階。また、そのときに勢い激しく目標に向かうこと。スポーツから出て広く使われる。

おい‐こ・む おひ‥【追込】

〘他マ五(四)〙
① 人や生き物を、きまった場所に追い立てて入れる。追い入れる。おいこめる。
※桜井基佐集(1509頃)夏「露深き草野に牛を追ひこみて暮るればそこと尋ねわびぬる」
② 罪科のある者を家などに閉じこめて、その出入りを禁ずる。籠居(ろうきょ)させる。おしこめる。おいこめる。〔日葡辞書(1603‐04)〕
③ 病気や病毒を体外に出さないで内部にこもらせる。
④ 相手がどうしても苦しい立場に立たなければならないようにさせる。おいこめる。
足摺岬(1949)〈田宮虎彦〉「私はその八重を〈略〉貧乏な毎日に追い込んだのだ」
⑤ 競争の最終段階で、先行する競争相手を激しく追いかける。
※安吾巷談(1950)〈坂口安吾〉世界新記録病「今までの日本は〈略〉、キレイに相手を離して勝つか、追いこまれるか、一方的で、自分が追いこんだことがない」
⑥ 編集・印刷関係で、行やページを改めず、前に続けて活字を組む。「改行せずに追い込む」
⑦ 取引相場で、盛んに売りに出て値を下げることをいう。〔取引所用語字彙(1917)〕

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉プラス 「追込」の解説

追込

英国の作家ディック・フランシスのミステリー(1976)。原題《In the Frame》。競馬界を舞台にしたシリーズの第15作。

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