酒,醴(あまざけ)/(こさけ),酢等の醸造,天皇等への供奉や官司等への供給をつかさどる令制の宮内省所属の官司。職員は,正(長官),佑(判官),令史(主典)各1人,酒部(さかべ)(伴部)60人,酒戸(しゆこ)(品部)等。酒部は酒類の供奉や供給(酌や献酒など)をつかさどる。酒戸は大宝官員令別記によると,倭国(大和)の90戸と川内国(河内)の70戸の計160戸の酒戸から,一番80丁ずつ交替で造酒司に番上することになっており,また津国(摂津)には外国使節の饗に従事する25戸の酒戸がいた。酒戸はおもに醸造に従事したらしいが,《延喜式》には酒戸は見えず,酒部が醸造も行うことになっている。《延喜式》には醸造法,供奉や供給の内容が定められ,原料には畿内の官田獲稲,正税稲,大炊寮の穀類,庸米の使用が記されている。平城宮跡では内裏東外郭東方の2基の井戸を備えた官衙跡が発見され,造酒司跡と推定されている。平安宮の造酒司は内裏西方で豊楽院の西北に位置するが,ほかに供御用の醸造を行っていたと考えられる酒殿が内裏の東方にあった。
執筆者:石上 英一
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…酒部は酒類の供奉や供給(酌や献酒など)をつかさどる。酒戸は大宝官員令別記によると,倭国(大和)の90戸と川内国(河内)の70戸の計160戸の酒戸から,一番80丁ずつ交替で造酒司に番上することになっており,また津国(摂津)には外国使節の饗に従事する25戸の酒戸がいた。酒戸はおもに醸造に従事したらしいが,《延喜式》には酒戸は見えず,酒部が醸造も行うことになっている。…
…はじめはいわゆるどぶろく(濁酒)であったが,758年(天平宝字2)の《紀伊国正税帳》に〈酒伍斛(こく)陸斗 清四斛,滓一斛六斗〉とあるように,どぶろくの上澄みを汲んだり,絹篩(きぬぶるい)でこした〈すみ酒(清酒,浄酒)〉がつくられるようになった。 大化改新後,宮内省のなかに造酒司(さけのつかさ)がおかれ,《延喜式》によるとここでこうじを使ってなん種類かの酒がつくられていた。なかでは新嘗会(しんじようえ)に使われた白貴(しろき)(白酒(しろき)),黒貴(くろき)(黒酒(くろき))と呼ばれる酒が有名で,10月上旬の吉日に臼殿(うすどの)で米をつき,こうじ室(むろ)でこうじをつくり,酒殿(さかどの)に並べたかめに蒸米とこうじと水を混ぜて酒を仕込んだ。…
…このほか,この地域を中宮とする説もある。
[官衙区域]
平城宮内で見つかった官衙区域のうち名称が推定できたものは,馬寮(めりよう),大膳職(だいぜんしき),陰陽寮(おんみようりよう),式部省,兵部省,民部省,造酒司(さけのつかさ)等であり,その遺跡を直接確認したものは馬寮,大膳職,陰陽寮,造酒司である。馬寮は平城宮西辺にあって,長い細殿的な建物からなり,その細殿にかこまれて広い空間がある。…
※「造酒司」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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