日本大百科全書(ニッポニカ) 「運上屋」の意味・わかりやすい解説
運上屋
うんじょうや
蝦夷地(えぞち)における場所請負人(ばしょうけおいにん)の交易場の経営拠点。松前藩はアイヌとの交易独占権を家臣へ知行として与えた(商場知行制)。この交易場を商場(あきないば)、商場所(あきないばしょ)、場所などと称したが、享保(きょうほう)~元文期に商人が商場所経営を請け負うようになり、場所請負制が成立した。この商場所に設置された出張所を運上屋という。場所請負人は運上屋に支配人、通詞(つうじ)、帖役(書記)、番人、稼方などを置き、商場所の経営を行って運上金を家臣に上納した。1799年(寛政11)幕府は東蝦夷地を直轄地とし、運上屋を会所と改称して民政も行わせた。このため西蝦夷地の運上屋でも商場所経営のみでなく、民政にも意を用いるようになった。以後、運上屋と会所は経営施設兼行政機関の性格をもつようになった。
[小川国治]
『白山友正著『増訂 松前蝦夷地場所請負制度の研究』(1971・南巌堂書店)』▽『北海道編・刊『新北海道史 第2巻』(1970)』▽『海保嶺夫著『幕藩制国家と北海道』(1978・三一書房)』▽『菊地勇夫著『幕藩体制と蝦夷地』(1984・雄山閣)』▽『高倉新一郎著『蝦夷地』(日本歴史新書・至文堂)』