日本大百科全書(ニッポニカ) 「那珂太郎」の意味・わかりやすい解説
那珂太郎
なかたろう
(1922―2014)
詩人。福岡市に生まれる。本名福田正次郎。東京大学国文科卒業。予備学生として土浦海軍航空隊に入り、のち海軍兵学校教官も務めた。1951年(昭和26)『歴程』に参加。また詩誌『ユリイカ』の寄稿仲間として、吉岡実、大岡信(まこと)、清岡卓行(たかゆき)と交友する。1965年の詩集『音楽』は意味に偏したことばの使用を排し「凪(な)ぐ海のうれひの靡(なび)く藻(も)のもだえの/なだれる波のなげきの白いしぶきの……」のような、詩と音楽を融合させた新しい試みで室生犀星(むろうさいせい)詩人賞・読売文学賞を受賞した。他の詩集に『ETUDES』(1950)、自律した言語芸術の試みを追求した『はかた』(1975)、『空我山房日乗其他(そのた)』(1985。芸術選奨文部大臣賞)、『幽明過客抄』(1990。第9回現代詩人賞)、『鎮魂歌』(1995。藤村記念歴程賞)など。選詩集に現代詩文庫『那珂太郎詩集』がある。1993年(平成5)芸術院恩賜賞。また萩原朔太郎(さくたろう)の研究者としても知られ、萩原朔太郎研究会会長でもある。おもな評論集に『萩原朔太郎その他』(1975)、『萩原朔太郎詩私解』(1977)、『詩のことば』(1983)。随筆集に『欝(うつ)の音楽』(1977)、『はかた幻像』(1986)、『時の庭』(1992)、『木洩(こも)れ日抄』(1998)がある。日本芸術院会員。
[吉田文憲]
『『音楽』(1965・思潮社)』▽『『現代詩文庫16 那珂太郎詩集』(1968・思潮社)』▽『『現代詩文庫144 続・那珂太郎詩集』(1996・思潮社)』▽『杉本春生著『那珂太郎』(『現代の詩と詩人』所収・1974・有斐閣選書)』▽『『萩原朔太郎その他』(1975・小沢書店)』▽『『詩集 はかた』(1975・青土社)』▽『『随筆集 欝の音楽』(1977・小沢書店)』▽『『萩原朔太郎詩私解』(1977・小沢書店)』▽『『定本那珂太郎詩集』(1978・小沢書店)』▽『『詩のことば』(1983・小沢書店)』▽『『那珂太郎詩集 空我山房日乗其他』(1985・青土社)』▽『『随筆集 はかた幻像』(1986・小沢書店)』▽『『幽明過客抄』(1990・思潮社)』▽『『時の庭』(1992・小沢書店)』▽『『鎮魂歌』(1995・思潮社)』▽『『随想集 木洩れ日抄』(1998・小沢書店)』