酵素誘導(読み)こうそゆうどう(その他表記)enzyme induction

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「酵素誘導」の意味・わかりやすい解説

酵素誘導
こうそゆうどう
enzyme induction

細胞内での諸反応を触媒する種々の酵素の量は,環境条件により著しく変動するものがある。そのように外部からの刺激または,物質添加により必要に応じて細胞内での生合成誘導される酵素をいう。たとえば,大腸菌のβ-ガラクトシダーゼは,通常,生合成されないが,培地中誘導物質として乳糖を加えると,それを大腸菌自身が利用できる状態まで分解するために,β-ガラクトシダーゼが大量に誘導・生合成される。大腸菌はもともと,β-ガラクトシダーゼをコードする遺伝子が存在しているが,ふだんは,その発現を抑える物質 (リプレッサー) によって抑制されている。この場合の乳糖は,その抑制を解除させ,酵素の合成を開始させる。このような現象は,必要とする代謝産物を,より効率よく生産する工業的手法 (代謝制御発酵) として応用されている。

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栄養・生化学辞典 「酵素誘導」の解説

酵素誘導

 生理的刺激や薬物などによって組織の酵素の量が増加すること.酵素の活性調節の一つの例で,酵素の遺伝子の転写を促進する場合とmRNAを安定化させる場合などがある.

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

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