転写(読み)テンシャ

デジタル大辞泉 「転写」の意味・読み・例文・類語

てん‐しゃ【転写】

[名](スル)
文章図面などを写し取ること。また、書き写すこと。「設計図転写する」
生体内で遺伝情報が伝えられる際の第一段階として、DNAデオキシリボ核酸)の塩基配列鋳型にして伝令RNAリボ核酸)が合成されること。→翻訳3
[類語](1写す書き取る筆写書写謄写透写拓本書き写す転記手写臨写なぞるトレースする

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精選版 日本国語大辞典 「転写」の意味・読み・例文・類語

てん‐しゃ【転写】

  1. 〘 名詞 〙 文章、絵、図などをそのまま他に写し取ること。他から写し取ること。
    1. [初出の実例]「依旧籍、転写并顕不在之由」(出典:続日本紀‐宝亀一〇年(779)九月戊子)
    2. [その他の文献]〔顔師古‐前漢書敍例〕

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化学辞典 第2版 「転写」の解説

転写(遺伝情報の)
テンシャイデンジョウホウノ
transcription

トランスクリプションともいう.DNAのもつ遺伝情報をリボ核酸(RNA)の塩基配列として写しとる過程をいう.この機構により,メッセンジャーRNAだけでなく,リボソームRNA転移RNAが合成される.酵素として,DNA依存RNAポリメラーゼ関与によって,DNAを鋳型とし,リボヌクレオシド三リン酸(ATP,GTP,UTP,CTP)を基質として,マグネシウムイオン存在下でRNAが合成される.生体内で合成されたRNAは,DNA中の鋳型として用いられた1本鎖部分と相補的塩基配列をもっている.RNAへどちらかの鎖が転写されるかは遺伝子ごとに決まっている.このとき,酵素がDNAのどの部分を転写するかを決めるのに,酵素以外のあるタンパク性因子が関与していることが見いだされた.大腸菌のDNA依存RNAポリメラーゼでは,シグマ因子とよばれるタンパク質が共存してはじめて,生体外実験でDNAのある1本鎖部分を鋳型としたRNA合成を行う.オルガネラ(ミトコンドリア葉緑体)でのDNAからRNAの転写は,オルガネラ由来の酵素によって同じように行われ,またウイルスなどでは宿主の酵素を利用して行われることが知られている.

出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「転写」の意味・わかりやすい解説

転写
てんしゃ
transcription

デオキシリボ核酸 DNAの遺伝情報がリボ核酸 RNAに写し取られること。すなわち DNA二重螺旋での塩基の対応と同様に,DNAの塩基の一次構造が RNAの塩基の相補的な一次構造となる。ただし DNAのチミンに対して RNAではウラシルが使われている。最初は DNAに依拠してのメッセンジャーRNAの合成に対して転写の語が使われたが,転移RNAやリボソームRNAも DNAの一次構造から直接に相補的につくられることがわかり,これらの場合も転写と呼ばれるようになった。

転写
てんしゃ
transcription

言語学用語。音声言語文字で表わすこと。音声記号を用いてなるべく精密に表記する音声学的転写,音素表記する音韻論的転写,正書法で表記するやり方などに分けられ,それぞれ目的に応じて使い分けられる。なお,ある文字体系から別の文字体系への書換え (たとえば,かなからローマ字へ) は,翻字と呼んで,区別する。

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改訂新版 世界大百科事典 「転写」の意味・わかりやすい解説

転写 (てんしゃ)

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

普及版 字通 「転写」の読み・字形・画数・意味

【転写】てんしや

又写し。

字通「転」の項目を見る

出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報

栄養・生化学辞典 「転写」の解説

転写

 DNAを鋳型としてRNAを合成する反応

出典 朝倉書店栄養・生化学辞典について 情報

世界大百科事典(旧版)内の転写の言及

【遺伝情報】より

…この情報のうち,最も基本的なものとして,タンパク質を構成するアミノ酸の配列順序(一次構造)を指定する情報があり,とくに遺伝暗号と呼ばれる。DNAのヌクレオチド配列には,アミノ酸配列のほかにも,転写や翻訳の開始や終結,それらの制御,DNA分子の複製などに必要な情報がおさめられている。さらに,突然変異や一つの染色体上の遺伝情報の組換えについても,DNAの塩基配列の変化やDNA分子のつなぎ換えというように,分子レベルでの理解ができるようになった。…

【文字】より

…そこには,音節文字と単語文字の共存がみられるばかりでなく,漢字のいわゆる〈形声文字〉における義符にも比される種類の表意要素が混在している。子音字だけで転写される音節文字はその連結された形が二つ以上の異なる単語を示しうる場合が多く,そのあいまいさを避けるために表意要素がそえられるのである。
【文字の起源】
 日本の〈かな〉や朝鮮においてかつて用いられた〈吐(と)〉はそれぞれ別個につくられたものであるが,その起源をもとめれば漢字に由来するものであることは明らかである。…

※「転写」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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