トランスクリプションともいう.DNAのもつ遺伝情報をリボ核酸(RNA)の塩基配列として写しとる過程をいう.この機構により,メッセンジャーRNAだけでなく,リボソームRNA,転移RNAが合成される.酵素として,DNA依存RNAポリメラーゼの関与によって,DNAを鋳型とし,リボヌクレオシド三リン酸(ATP,GTP,UTP,CTP)を基質として,マグネシウムイオン存在下でRNAが合成される.生体内で合成されたRNAは,DNA中の鋳型として用いられた1本鎖部分と相補的塩基配列をもっている.RNAへどちらかの鎖が転写されるかは遺伝子ごとに決まっている.このとき,酵素がDNAのどの部分を転写するかを決めるのに,酵素以外のあるタンパク性因子が関与していることが見いだされた.大腸菌のDNA依存RNAポリメラーゼでは,シグマ因子とよばれるタンパク質が共存してはじめて,生体外実験でDNAのある1本鎖部分を鋳型としたRNA合成を行う.オルガネラ(ミトコンドリアや葉緑体)でのDNAからRNAの転写は,オルガネラ由来の酵素によって同じように行われ,またウイルスなどでは宿主の酵素を利用して行われることが知られている.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…この情報のうち,最も基本的なものとして,タンパク質を構成するアミノ酸の配列順序(一次構造)を指定する情報があり,とくに遺伝暗号と呼ばれる。DNAのヌクレオチド配列には,アミノ酸配列のほかにも,転写や翻訳の開始や終結,それらの制御,DNA分子の複製などに必要な情報がおさめられている。さらに,突然変異や一つの染色体上の遺伝情報の組換えについても,DNAの塩基配列の変化やDNA分子のつなぎ換えというように,分子レベルでの理解ができるようになった。…
…そこには,音節文字と単語文字の共存がみられるばかりでなく,漢字のいわゆる〈形声文字〉における義符にも比される種類の表意要素が混在している。子音字だけで転写される音節文字はその連結された形が二つ以上の異なる単語を示しうる場合が多く,そのあいまいさを避けるために表意要素がそえられるのである。
【文字の起源】
日本の〈かな〉や朝鮮においてかつて用いられた〈吐(と)〉はそれぞれ別個につくられたものであるが,その起源をもとめれば漢字に由来するものであることは明らかである。…
※「転写」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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