里ことば(読み)さとことば

改訂新版 世界大百科事典 「里ことば」の意味・わかりやすい解説

里ことば (さとことば)

一般には〈いなかことば〉の意味であるが,江戸時代には遊郭遊女らの用いた特殊なことばづかい,および遊郭内での隠語語彙ごい)をさし,くるわことば,里なまり,遊里語ともいう。江戸吉原に行われたものがもっとも有名であるが,京都,大坂岡場所でも用いられた。特殊なことばづかいを,吉原の例で示せば〈ありんす(あります)〉〈ざんす(ございます)〉などである。吉原の里ことばは,諸国から集まる遊女の生国方言やなまりをかくすためにつくられたことばとも,また俠客(きようかく)らの用いた六方詞(ろつぽうことば)のなまりとも,あるいは吉原開設のおりに駿府(静岡)や京都から来た遊女の方言が残ったものともいう。おそらく諸事情がかさなって形成されたのであろうが,里ことばが独特の遊興気分をもり上げる要素となったことも見のがせない。なお,一流の遊女屋では自家のみの特別の里ことばをもっていた。里ことばは吉原でも年代によって多少の相違があり,幕末ごろからあまり使用されなくなった。
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百科事典マイペディア 「里ことば」の意味・わかりやすい解説

里ことば【さとことば】

江戸時代,遊廓(ゆうかく)で遊女などが用いた特殊な語彙(ごい)・語法。里なまり,廓詞(くるわことば)とも。京の島原に始まって吉原に移り,六方詞などを取り入れて明和安永(1764年―1781年)ごろほぼ確定した。遊女の生国のなまりを隠すために用いられたともいう。〈ありんす(あります)〉〈わちき(私)〉など。

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世界大百科事典(旧版)内の里ことばの言及

【女性語】より

…サモジのサは佐藤のサ)とかオネショ(寝小便)・オマク(まくら)のような語形成は一部の女性に生きている。 特殊な女性社会の職業語として生まれたものに〈廓(くるわ)ことば(里ことば)〉がある。江戸時代の廓で遊女たちが使いはじめた。…

※「里ことば」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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