化学辞典 第2版 「重なり積分」の解説
重なり積分
カサナリセキブン
overlap integral
二つの軌道関数の重なりの大きさを表す積分.ψa,ψb を軌道関数とすると,重なり積分 Sab は次式で与えられる.
Sab = ∫ ψa*ψbdτ
ここで,ψa* は ψa の複素共役な関数であり,積分は全空間にわたって行われる.二つの軌道関数が同一の場合(ψa = ψb),重なりは完全であり,Saa = 1となる.ψaψb の場合,Sab の値は1より小さい.この場合,Sab の大きさは,それらの軌道によってつくられる結合の強さを判定する基準となる.たとえば,ψa と ψb が直交しているときは Sab = 0であり,ψa,ψb の間の結合は生じない.分子軌道法による計算においては,重なり積分は ψa = ψb 以外は無視されることが多い.つまり,Saa = 1,Sab = 0とおいた重なり積分無視の近似がとられる.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報