日本歴史地名大系 「野郷」の解説 野郷かどのごう 兵庫県:丹波国氷上郡野郷「和名抄」高山寺本所載の郷。同書東急本にはみえない。訓は「加止乃」。平城京跡出土木簡に「(表)丹波国氷上郡葛」「(裏)鳥取首赤猪二 鳥取部真持一」とあり、天平(七二九―七四九)初年頃にさかのぼる地名とわかる。「丹波志」は江戸時代の葛野庄すなわち犬岡(いぬおか)・黒田(くろだ)・上成松(あげなりまつ)・柿芝(かきしば)(町・村)・長野(おさの)・大谷(おおたに)・三原(みはら)・三方(みかた)・中(なか)・下・中野(なかの)・上新庄(かみしんじよう)・下新庄・常楽(じようらく)・横田(よこた)の各村(現氷上町)と市部(いちべ)村(現同上)をあげるが、同村は氷上庄と重複して載せる。 野郷かどのごう 京都市:山城国(京都市域)郡郷葛野郡野郷「和名抄」高山寺本は「賀止乃」、刊本は「加度乃」と訓ず。葛野の地名、及び郡名は多く文献上にみられるが、郷名については不詳。宝亀一一年(七八〇)一二月二五日の西大寺資財流記帳(内閣文庫・西大寺蔵)にみえる「葛野郡葛野池」や、「延喜式」神名帳にみえる葛野坐月読(つきよみ)神社(現西京区)は郷名を負ったものであろうし、同じく「延喜式」にある葛野墓・後葛野墓も郷名を負っている。「山城志」は郡(こおり)村(現右京区)・上野(かみの)村(現西京区)にあて、また「大日本地名辞書」は太秦(うずまさ)村(現右京区)・郡村に比定。 野郷あざぶごう 愛知県:三河国碧海郡野郷「和名抄」高山寺本に「野」と記す。刊本ともに訓はない。「大日本地名辞書」でははであり、野は「あざぶ」と読むと解釈する。そして西加茂郡三好(みよし)町の旧莇生(あざぶ)村・三好村と、豊田市の西部、旧宮口(みやぐち)村を含めた地域に比定する。 野郷かどのごう 福岡県:筑後国上妻郡野郷「和名抄」諸本とも文字の異同はなく、訓を欠くが、「かどの」であろう。遺称地名として南北朝期から室町期の葛野庄(現筑後市か)がある。「太宰管内志」は「今は詳ならず」と記す。「大日本地名辞書」に「今詳ならず、又延喜式に見え、上妻郡の駅家たり、即筑後府以南、狩道に至る路間とす、今羽犬塚の辺なるべしと想はるれど、未だ徴証を得ず」とみえるように、「延喜式」兵部省諸国駅伝馬条にみえる葛野駅が現筑後市前津(まえづ)字車路(くるまじ)付近に比定されているから、同名を冠する葛野郷もこれを含む地域にあてることができよう。 出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報 Sponserd by