日本大百科全書(ニッポニカ) 「金光明最勝王経音義」の意味・わかりやすい解説
金光明最勝王経音義
こんこうみょうさいしょうおうきょうおんぎ
経典辞書。1冊。著者未詳。1079年(承暦3)の識語があり、成立はそれよりすこし古いかと推測される。『金光明最勝王経』の巻音義で、436の漢字を掲出し、字音注、意義注を記し、万葉仮名で和訓を付す。上代特殊仮名遣いのコの甲類・乙類や清濁、アクセントの万葉仮名による書き分け、韻尾のウと三内撥音(はつおん)尾のそれぞれの区別、字音の四声や和語のアクセントの施声など、音韻認識のうえで注目される。とくに、アクセントの平声(ひょうしょう)と平声軽(ひょうしょうかる)との区別は貴重である。また、現存最古のいろは歌と、醍醐寺(だいごじ)蔵『孔雀経音義(くじゃくきょうおんぎ)』に次ぐ古い五十音図とを所載している。大東急記念文庫蔵。
[沖森卓也]