日本で本来の日本語をさしていう。〈倭語〉とも書き,〈大和言葉(やまとことば)〉ともいう。日本語語彙の三大要素の一つとして,漢語(字音語),外来語に対して,種(しゆ)の違いを強調する用語。本来の日本語といっても,文献以前の日本語形成期に早く借用(もしくは混入)していた語に〈うま(馬)〉〈うめ(梅)〉などが認められるが,それらは和語に包括するのが普通で,文献時代以後,外国語から摂取したものに対して固有の種をさす。時代が経るにつれて日本語は語彙の構成を少しずつ変え漢語を増加し字音語を生産し,ついで外来語を加えつつ,現代では和語は全体の割合では漢語(字音語)に第1位を譲るにいたっている。しかし使用量からみれば和語は依然として50%以上で,首位を占める。すなわち種類でみると漢語(字音語)が50%近くに上るが,使用度数は一つ一つにおいては少なく,拡散する。日常よく用いられる語は和語が多く,基本語はやはり和語であるといわれる。そして和語は,専門語,術語などの領域で新しく造られることは少なく,ほとんどは漢語(字音語)もしくは外来語そのままの借用が多い。
和語は,同一の意味をあらわす異種の語と対立項を形成して,そこに使用の選択が行われる。たとえば字音語〈学校,国家,友人,図書,季節〉に対して和語〈まなびや,くに,とも(だち),ふみ,おりふし〉,また外来語〈スクール,ネーション,フレンド,ブック(ス),シーズン〉が対立項をなすが,和語には雅言,日常語,古語,文学語などの性格がみとめられることがある。〈ライス〉に対して〈いね,こめ,こめつぶ,めし,御飯(ごはん),飯米(はんまい),米穀(べいこく),米飯(べいはん)〉等々多くの対立項が併存するが,定着して深く広く普及した字音語〈ごはん〉などは和語と径庭のない感覚で用いられることが知られる。特に〈菊(きく),肉(にく),枠(わく),麩(ふ)〉など通常和語の対立項を欠くものは和語と誤認されることがある。
執筆者:山田 俊雄
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漢語・外来語に対し、日本語本来の語。「やまとことば」ともいう。本来、第一音節には濁音およびラリルレロが来ない。ダク(抱)はイダク等、バラ(薔薇)はウバラ等から、中古以後転成した語形である。和語は、「木(き)」「血(ち)」「谷(たに)」「聞(き)く」「見(み)る」など1、2音節語が多く、複合によって語が増加する。複合語は和語と和語または接頭語・接尾語とからなり、下の語の頭音が濁音化することがある(例、谷〈たに〉川〈がわ〉)。また、上の語の末尾の音が変わることがある(例、酒〈さけ〉→酒〈さか〉屋)。和語は漢語と複合することがある。漢語が上のもの(例、悪玉〈あくだま〉、縁組〈えんぐみ〉等)を重箱読(じゅうばこよみ)、和語が上のもの(例、相客〈あいきゃく〉、初陣〈ういじん〉等)を湯桶読(ゆとうよみ)という。外来語との複合もある(例、「消しゴム」「マッチ箱」等)。和語には活用のない語(体言・副詞・助詞等)と、活用のある語(動詞・形容詞・助動詞等)とがあるが、漢語・外来語はおもに名詞・形容動詞語幹等、活用のない語に限られ、和語の「する」「だ」(文語は「す」「なり」「たり」)をつけて初めて述語・修飾語となりうる。活用語尾・助動詞・助詞はすべて和語であり、文法機能の中枢は和語が独占し、この性格は古代から現代まで一貫している。和語の異なり語数は平安時代には和文で約9割、漢文訓読文で4割以下であった。中世末以来欧州諸語が、明治初期に漢語が増加し、近時は英語の外来語が急増しているが、和語が文法機能を堅持している点はすこしも変わらない。
[築島 裕]
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