類聚名義抄(読み)ルイジュミョウギショウ

デジタル大辞泉 「類聚名義抄」の意味・読み・例文・類語

るいじゅみょうぎしょう〔ルイジユミヤウギセウ〕【類聚名義抄】

平安末期の漢和辞書編者未詳。仏・法・僧の3部からなり、120の部首によって漢字を分類し、字音字義和訓などを注記し、和訓には声点によってアクセントが示される。名義抄

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精選版 日本国語大辞典 「類聚名義抄」の意味・読み・例文・類語

るいじゅみょうぎしょう‥ミャウギセウ【類聚名義抄】

  1. 平安末期の漢和辞書。編者名は不明だが法相(ほっそう)宗の僧侶の編で、院政期の成立かという。仏・法・僧の三部仕立とし、漢字を偏旁によって分類、音訓字体などを示す。文字史・漢文訓読語研究の重要資料であり、和訓の部分に付された声点は平安時代のアクセントを知るのに貴重。「三宝類字集」「三宝類聚名義抄」などの異称があり、原撰本系の「書陵部本」と改編本系の「高山寺本」「観智院本」「蓮成院本」「西念寺本」とがあるが、完本は「観智院本」だけである。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「類聚名義抄」の意味・わかりやすい解説

類聚名義抄
るいじゅうみょうぎしょう

古代の漢字字書。「人」「彳」等120の部首により漢字を分類し、発音、字義、和訓等を注記したもの。初撰(しょせん)本、増補本の別があり、「仏」「法」「僧」の篇名(へんめい)をもつので『三宝類字集』等の別名がある。

築島 裕]

初撰本

六帖(じょう)か。うち一帖のみ存。宮内庁書陵部蔵。平安末期写。11世紀末ごろ成立。著者は法相(ほっそう)宗の僧か。古辞書、仏書、古訓点など多数の先行文献を忠実に引用し、国語史学上重要な資料である。

[築島 裕]

増補本

観智院(かんちいん)本(十二帖、唯一の完本、天理図書館蔵、鎌倉中期写)、高山寺本(仏上・仏中の二巻存、天理図書館蔵、鎌倉中期写)、蓮成院(れんじょういん)本(仏上中・法上中・僧上中下の零本)、西念(さいねん)寺本(仏上)等がある。12世紀末ごろ真言宗僧により改編されたもので、初撰本に基づき、出典名、漢文注を削り、万葉仮名片仮名に改め、和訓を増補したりした。多数の字音注や4万に上る和訓は古語研究上必須(ひっす)のものである。

[築島 裕]

『正宗敦夫校訂、中田祝夫解説『類聚名義抄1・2』(1975・風間書房)』『築島裕解説『類聚名義抄』(1976・勉誠社)』


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百科事典マイペディア 「類聚名義抄」の意味・わかりやすい解説

類聚名義抄【るいじゅうみょうぎしょう】

古代の漢和辞書。〈るいじゅみょうぎしょう〉とも読む。原撰本と改編本の2種がある。漢字を字形で分類し,諸書から注記・和訓を引用したもので,音義・辞書・訓点本の集大成。原撰本は11―12世紀ごろの成立で,撰者は法相(ほっそう)宗の僧侶か。出典名を明示するなどきわめて資料的価値が高いが,零本(れいほん)の図書寮(ずしょりょう)本1帖のみしか伝存していない。改編本は,出典名を削除したほか一大増補改訂を加えたもので,撰者は真言宗の僧侶とみられる。改編本系の唯一の完本である観智院本11帖からなり,所収漢字約3万2000,和訓約4万を越え,国語史学・書誌学上の重要資料となっている。
→関連項目漢和辞典和名類聚抄

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改訂新版 世界大百科事典 「類聚名義抄」の意味・わかりやすい解説

類聚名義抄 (るいじゅうみょうぎしょう)

編者不明の漢和字書。原撰本は11~12世紀ころの成立と推定される。宮内庁書陵部に図書寮本と呼ばれるものが一部分残っているのみである。現存しない書物からの引用の多いこと,古い和訓を記していること,声点(しようてん)の施されたものがあり,平安時代末期のアクセントを知りうることなどの点で注目される。鎌倉時代になって改編増補され10巻にまとめられた。改編本は,多数の和訓を収録しており,平安時代末期の和訓の集大成といわれる。和訓は,原撰本では出典別に万葉仮名と片仮名で示されているが,改編本ではだいたい片仮名に統一されている。《名義抄》と略称されることもある。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「類聚名義抄」の意味・わかりやすい解説

類聚名義抄
るいじゅみょうぎしょう

『名義抄』ともいう。部首引きの漢和辞典。標出漢字にその字形 (異体字 ) ,字音,意味,和訓などを付す。法相宗 (ほっそうしゅう) の僧侶の撰とみられるが未詳。名称は『倭名類聚抄』と『篆隷万象名義』に由来するとみられる。原撰本系は図書寮本 (ずしょりょうぼん,としょりょうぼん) で,零本ではあるが,逸書を含む多くの出典からの引用注記と正確な声点で知られる。改編 (増補) 本系には観智院本 (かんちいんぼん。完本) ,高山寺本 (こうざんじぼん。『三宝類字集』ともいう) ,西念寺本 (さいねんじぼん) ,蓮成院本 (れんじょういんぼん。『三宝類聚名義抄』ともいう) がある。観智院本は収録語彙数が多い。『名義抄』は種々の国語資料となるが,特に,それが典拠のあるものであることを示すために和訓につけられた声点は,日本語アクセント史構築の資料として重要である。

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世界大百科事典(旧版)内の類聚名義抄の言及

【愛】より

…しかし,この現象は,必ずしも時代の新古のみによるものとは考えられない。院政時代の古訓集成とも称すべき《類聚名義抄》に,〈寵〉〈恩〉〈恵〉〈寛〉等々の漢字をアイスという語で読むことが示されている以上,漢文訓読の世界では,相当はやくより〈愛す〉という語が普及していたことを推測させる。
[仏教思想と〈愛〉]
 さかのぼって,《万葉集》巻五,山上憶良〈思子等歌一首〉の前に置かれている〈釈迦如来,金口正説,等思衆生,如羅睺羅。…

【訓】より

…漢文に訓を書きこんだ例は,《新訳八十巻華厳経音義私記》《四分律音義》など,奈良時代末期から平安初期に現れる。当時の漢籍・仏典につけた訓を集大成したものが《類聚(るいじゆ)名義抄》(平安末期成立)だが,その観智院本では字数3万2000,訓4万,訓の種類1万で,訓を欠く文字が全体の1/3,1字で30以上の訓をもつものもある。それは漢字の多義であることにもよるが,当時漢字の訓のつけ方が比較的自由であったことにもよる。…

【辞書】より

…権威ある辞書として広く行われ,後出の辞書に大きな影響を与えた。《類聚名義抄(るいじゆうみようぎしよう)》(《名義抄》と略称される)は,漢字の部首引き辞書で,法相宗の僧の著とみられ,1081年(永保1)以後の成立である。この辞書は先行の諸書から材料を多くとり入れており,当時の和訓の集大成の観を呈していて,古語研究資料として重視されている。…

※「類聚名義抄」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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