大乗仏教経典の一つ。サンスクリット名スバルナ・プラバーサSuvarṇaprabhāsa(黄金の輝き)。サンスクリット本,チベット訳,漢訳のほか,ウイグル語,満州語,蒙古語などに訳され,東アジアに広く普及したことが知られる。漢訳は5種あったが,現存するのは,曇無讖(どんむしん)訳《金光明経》4巻(5世紀初め),宝貴らが従来の諸訳を合糅(ごうじゆう)した《合部金光明経》7巻(597),義浄訳《金光明最勝王経》10巻(703)の3種で,後世重視されたのは義浄訳である。内容は,仏の寿命の長遠性,金光明懺法,四天王による国家護持や現世利益など雑多な要素を含み,密教的な色彩が強い。本経が諸国で重視されたのは,特にその鎮護国家的性格による。日本でも《仁王般若経》《法華経》と共に護国三部経の一つとして重視され,四天王寺,国分寺(金光明四天王護国寺),最勝会,最勝講など,いずれも本経にもとづくものである。
執筆者:末木 文美士
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仏教経典。4世紀ごろおそらく北インドで成立したとみられる中期大乗経典。原名をスバルナプラブハーサ・ウタマ・インドララージャSuvara-prabhāsa-uttama-indra-rāja(『金光明最勝帝王(さいしょうていおう)』)という。三訳の漢訳が現存する。『金光明経』は北涼の曇無讖(どんむしん)の訳になり、原典を略して4巻としたもの。『金光明最勝王経』は唐の義浄(ぎじょう)訳で、原典を直訳して10巻としたもの。ほかに隋(ずい)代に8巻に編集された『合部(ごうぶ)金光明経』である。チベット訳も3種あり、原典、ウイグル訳、モンゴル訳のテキストが現存し、本経の広い分布がみられる。本経は空(くう)、懺悔(さんげ)の思想を中心とし、四天王(してんのう)、吉祥天(きちじょうてん)、地居天(じごてん)などの仏法守護や、国家鎮護の信仰を配した幅広い、物語性に富む経典である。わが国では国分寺(金光明四天王護国之寺の略)の所依(しょえ)経典であり、最勝会(さいしょうえ)、金光明懺法(せんぼう)、放生会(ほうじょうえ)などの根拠となった。ネパールでは「九大法宝」中の一経典であり、モンゴルでは毘沙門(びしゃもん)信仰の根拠となった。のち『法華経(ほけきょう)』に首座を譲った。
[金岡秀友]
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