〈せいれいしゅう〉ともいい,詳しくは《遍照発揮(へんじようほつき)/(へんじようはつき)性霊集》という。空海(弘法大師)の詩文などを集めて10巻としたもの。編者は空海の弟子真済(しんぜい)で,のち8,9,10の3巻が散逸したため,1079年(承暦3)に済暹(さいせん)が補い,《続性霊集補闕鈔》3巻を編集して巻数を旧に復した。時代的には804年(延暦23)から834年(承和1)まで31年間の空海の文集約111首を収めている。内容的には詩賦類,碑銘類,詩文類,表啓,書啓,噠嚫・願文類,願文・噠嚫・表白類,奏・啓白文類,序・詩・讃などに分類される。平安時代初期の代表的な個人の詩文集として著名であるとともに,当時の政治,思想,文学,宗教,とくに日本密教思想や信仰を知るうえで最も貴重な資料といえる。ただし,後補の8,9,10の3巻のうちには空海の作でないものも混入している。同様のものに《高野雑筆集》上下2巻があり,併読する必要がある。
執筆者:和多 秀乗
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平安初期の漢詩文集。正しくは『遍照発揮(へんじょうほっき)性霊集』。10巻。空海作。弟子の真済(しんぜい)が編纂(へんさん)したもので、当初10巻であったが、巻8以下の3巻が散逸し、1079年(承暦3)に済暹(さいせん)が逸文を拾集して『続(ぞく)性霊集補闕鈔(ほけつしょう)』3巻を編み、ふたたび10巻に編纂した。空海の作品として確実なもの108編。詩、碑文、願文、表白などに分類されているが、その華麗豊贍(かれいほうせん)な詩文に作者の卓抜した才能がうかがえる。後世僧侶(そうりょ)たちが詩文の手本にしたが、また当時の漢詩文を知るうえで貴重な資料である。
[大曽根章介]
『渡辺照宏・宮坂宥勝校注『日本古典文学大系71 三教指帰・性霊集』(1965・岩波書店)』
空海の漢詩文集。10巻。弟子の真済(しんぜい)編。正式には「遍照発揮性霊集(へんじょうほっきせいれいしゅう)」といい,「遍照」は空海の灌頂(かんじょう)号の略称。空海の存命中の827~835年(天長4~承和2)の間に成立。早くから巻8・9・10が散逸したため,済暹(さいせん)が1079年(承暦3)に逸文を収集して「続遍照発揮性霊集補闕鈔」3巻を編み,もとの巻数としたが,そのなかには空海の作でないものも混在する。詩・碑文・上表・啓・書簡・願文などの作品が収録され,綜芸種智院(しゅげいしゅちいん)創設にあたり起草した「綜芸種智院式并序」も本書に収める。醍醐寺本・高野山大学本・尊経閣文庫本など多くの古写本がある。「日本古典文学大系」所収。
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