改訂新版 世界大百科事典 「金属線星」の意味・わかりやすい解説
金属線星 (きんぞくせんせい)
metallic line star
金属線A型星,あるいはスペクトル型から単にAmとも呼ばれる。星のスペクトル分類で,1940年代に,カルシウムK線の弱い星として,正常A型星から分離された。見るものにより一つに分類できず,K線,バルマー線,ほかの金属線による分類を並べて,A2F0F3(代表的な星,おうし座63星の場合)のように表す。連続光の示す温度,すなわち吸収線より深い星の光球の放射する温度は水素による分類と一致して,7000~9000Kである。その温度の正常星より金属線が強く見えるのがこの名の由来である。スカンジウムの弱いのを使うと,より高温側に拡張できる。A型の星の10~20%が金属線星である。金属線星の年齢は,ヒヤデス,プレセペなどの散開星団に多く見られることから,主系列を離れかけている数億年の星と推定される。変光はしないものが多いが,脈動帯にかかっているものがいるか座δ星型である。高分散スペクトルの詳細な解析では,自転の遅いこと,微小乱流の小さいこと,カルシウム,スカンジウムが太陽の数分の1から1/10と少なく,ほかの金属は多いことなどが認められる。連星系に属するものがほとんどで,自転の遅いのは相互作用による。元素の異常は元素量の多少によると思われ,スペクトル線の吸収係数の違いによる元素の拡散で説明しようとしている。これは,自転や乱流がからんでむずかしい問題であり,起源の問題とともに,近年発展している連星系の進化により解明が期待されている。
執筆者:近藤 雅之
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報