スペクトル型(読み)すぺくとるがた(英語表記)spectral type

日本大百科全書(ニッポニカ) 「スペクトル型」の意味・わかりやすい解説

スペクトル型
すぺくとるがた
spectral type

恒星からの光を低分散度の分光器にかけて撮影し、そこに見られる吸収線スペクトルの見かけのようすに従って類別したもの。19世紀末から始められ、20世紀の初めには約23万個の恒星についてのスペクトル型を記載した『ヘンリー‐ドレーパー星表』が出版された。単なる見かけによる系列化に対してアルファベット記号が与えられていたが、しだいに天体物理学的な意味づけが可能になるにつれて順序も入れ替わり、ほぼ恒星の表面温度の高い順に、O、B、A、F、G、K、M型となって定着している。20世紀末になり、赤外線観測でM型星より低温の恒星が見つかり、L型、T型という分類群が加わった。M型近くの低温度星については、組成異常を示すものがあり、R、N、S、C型もある。各型はさらに10に細分され、A0型とF0型の中間の星はA5のように記される。

 標準的なスペクトル型は、太陽にみられるような標準元素組成のガスが数万Kから数千Kの温度領域で発するものとして、理論的に詳しく解明されている。さらには恒星物質の圧力影響がスペクトル線の太さに現れることを利用して、「光度階級」を示すローマ数字Ⅰ~Ⅴを添えて二次元のスペクトル型指定をする方式もある。スペクトルのようすは星間吸収に影響されないので、遠い恒星についてもスペクトル分類ができれば、恒星の質量、絶対光度距離などを推定するのに役だつ。

[小平桂一・家 正則

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「スペクトル型」の意味・わかりやすい解説

スペクトル型
スペクトルがた
spectral type

恒星をその発光のスペクトルの種類や強さによって分類したもの。通常用いられるのはハーバード式分類法である。それは
という系列をなすもので,左のほうが高温で 25000K (→ケルビン ) 以上,右が 3500K以下の低温の星にあてはまり,左へいくほどスペクトルは早期,右へいくほど晩期であるという。O~Mの系列から枝別れしているR,N,Sのそれぞれの型は化学的組成が他の星とは異なっていることを表す。この各文字に 0~9 の 10段階の脚号をつけて細分し,またその後に光度を示すI ~ Vの添字をつけて区別する。

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