鏡磨ぎ(読み)カガミトギ

改訂新版 世界大百科事典 「鏡磨ぎ」の意味・わかりやすい解説

鏡磨ぎ (かがみとぎ)

鏡を磨ぐことを仕事とした旅職のこと。鏡は材質にガラスが用いられる以前は,長い間銅または青銅であったから,たえずその曇りを磨ぐ必要があった。その技術を江戸時代の《人倫訓蒙図彙》(1690)に〈鏡磨にはすゝかねのしやりといふに,水銀を合て砥(と)の粉をましへ梅酢にてとくなり〉と記すが,それ以前,室町時代はザクロ,平安・鎌倉時代はカタバミが使われていたらしい。江戸時代はとくに越中(富山県)氷見(ひみ)の者が中心で,毎年夏から翌年春にかけ西は摂津から東は関東一帯へ出稼ぎし,全国の大半はこの仲間が占めた。寒中が盛んで,老人が多かったという。旅装は紺の股引ももひき)・脚絆・手覆,刺子(さしこ)の足袋,草鞋履きで,背中に小さな磨箱を担い,腰の角帯に梅酢の入った竹筒をさげ,箱の中にはガマの葉製の磨袋,朴木炭,わらたわし,磨石,砥の粉・水銀を量るはかりなどをつめていた。明治になるとにわかに衰微して,小間物行商などを兼ねるようになっていった。
執筆者:

出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

2022年度から実施されている高校の現行学習指導要領で必修となった科目。実社会や実生活で必要となる国語力の育成を狙いとし、「話す・聞く」「書く」「読む」の3領域で思考力や表現力を育てる。教科書作りの...

現代の国語の用語解説を読む