開物思想(読み)かいぶつしそう

改訂新版 世界大百科事典 「開物思想」の意味・わかりやすい解説

開物思想 (かいぶつしそう)

〈開物〉という語は《易経》の繫辞上伝に出る〈開物成務〉の語から来たもので,〈事物を開発し,事業を成就する〉という意味であり,実学ないしは技術を重視する思想である。1637年,中国の宋応星は《天工開物》と題する技術書を書いた。三枝博音の解釈によると,天工は人工に対する自然力を意味し,この自然力を活用する人工が開物であるという。その内容は当時行われていた中国の重要産業を網羅し,それらについて知識人向けの解説を行ったものである。

 朝鮮でも李朝時代に〈実事求是〉をスローガンとする実学派があったが,こうした大陸からの影響もあって,日本でも17世紀には熊沢蕃山儒学を単なる名分論ではなく,利用厚生論として発展させ,18世紀には富永仲基大坂の懐徳堂派の学風が町人的実学を進め,さらに皆川淇園林子平工藤平助本多利明,佐藤信淵などの開物思想家が輩出した。それは信淵によれば,〈国土を経営し,物産を開発し,境内豊饒にし,人民蕃息せしめる業〉という国土開発・産業開発の事業を展開させようとする考え方であった。
実学
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