日本大百科全書(ニッポニカ) 「開花調節」の意味・わかりやすい解説
開花調節
かいかちょうせつ
人工的手段を用いて、植物本来の開花時期を早めたり(促成)あるいは遅らせたり(抑制)することをいう。実際栽培上では、端境(はざかい)期に出荷して高値になることを期待したり、作期をずらして労力および生産施設の高度有効利用を図る目的で行う。また研究あるいは採種のために開花期の異なる植物の間で交配しようとする場合、両者を同時に開花させるように調節することもある。しかし、一般に果菜や蔬菜(そさい)の促成・抑制栽培などは開花調節とはいわない。開花時期をずらして咲かせた花そのものに価値をみいだす場合に開花調節といい、主として花卉(かき)生産の場で行われる。対象となる植物が、どのような環境条件、すなわち日長、温度、あるいはそれらの組合せ、化学薬品などに反応して花芽分化、花芽の発育を行い開花するかによって、開花調節の方法もさまざまである。わが国で代表的な開花調節といえば、切り花ギクの電照栽培がある。これは、キクが夜が長い条件下で花芽を分化する短日植物であることを利用し、電灯照明下で花芽分化を抑制して冬から初春にかけて開花させ切り花出荷を行う栽培法である。また、シェードギクは4月中旬からシェード(遮光)を行い、短日によって開花期を早め、5月中旬から6月中旬に切り花をとる栽培法である。一方カーネーションは相対的長日植物で、冬季の切り花栽培では電照によって開花を促進する。なお、チューリップやスイセンなど球根植物の切り花栽培や春咲きの鉢物栽培などでは温度処理によって促成栽培することが多いが、これらは慣例的に開花調節とはいわず、促成とよばれている。
[星川清親]