作物の正常の収穫・出荷時期よりも遅く収穫・出荷するための栽培法をいう。とくに野菜・花など園芸で行われ、促成栽培とともにその作物の供給期間を長くすることに役だてられている。もっとも普通にみられるものは、山間高冷地での夏野菜とくにトマト、キュウリなど果菜類の抑制栽培である。平坦(へいたん)地では真夏は暑すぎて秋口からの出荷は品薄になる。しかし高冷地では真夏によく生育し、秋口から出荷されるので、市場の需要も強く、高価に販売される。また秋野菜が出荷薄となる冬に向けて、西日本暖地で秋野菜の抑制栽培が行われる。秋播(ま)きキュウリを初冬からはビニルハウスで覆って12~1月に出荷する、キャベツを夏秋播きして冬期も温暖な露地で過ごさせて3~4月の端境期に出荷するなどである。花(キクなど)では電照栽培により花芽のつきを遅らせ、秋からはハウス保温して暮れから正月の需要の多いときに出荷するなどの特殊なくふうも行われている。また抑制栽培は、促成・普通栽培と組み合わせて、開花期の異なる植物を交配する育種にも利用されている。
[星川清親]
野菜などを普通よりも遅く生産するための栽培法で,促成栽培との対照で用いられる。需要は一年中あるが,出荷が短期間に集中し,季節はずれには高値となるトマト,ナス,キュウリなどの果菜類で行われる。抑制栽培では,栽培地の温度条件の違いを利用したり,生育後期にハウスなどの保温施設を利用して収穫時期をずらすのが普通である。例えばトマトの場合,真夏の高温下では生育や結実が不良となり,出荷は6~7月に集中するが,標高400~700mの冷涼地で栽培を行って8~10月に出荷する。また,10~12月に出荷するためには,太平洋沿岸の温暖な地帯で栽培し,11月中旬以降はハウスなどで保温する方法がとられる。
執筆者:杉山 信男
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