デジタル大辞泉
「陰嚢水腫」の意味・読み・例文・類語
出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例
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陰嚢水腫
いんのうすいしゅ
Hydrocele testis
(子どもの病気)
陰嚢に水がたまってしまう病気です。大きくふくらんだり、左右の大きさが違ったりするので気づきます。痛みもなく、ほとんどは片側だけに起こります。
母親のおなかにいる時には、赤ちゃんのおなかのなかにあった精巣(睾丸)が、生まれるまでには陰嚢に降りて袋に入ります。陰嚢が通った道は、普通は自然に閉じます。陰嚢水腫は、この道の閉じるのが遅かったり、うまく閉じないことが原因で起こります。
陰嚢が大きくなります。痛みはありません。赤ちゃんの陰嚢を後ろから懐中電灯で照らして、透けて見えた場合、陰嚢水腫の疑いがあります。
超音波検査で陰嚢にたまっているものが水分であることを確認します。
ほとんどの場合、1年ほどで自然に吸収されるので経過をみます。2歳を過ぎても水が吸収されない場合や陰嚢が異常に大きい場合は、手術をすることがあります。針を刺して水を出す方法は、治るのを遅らせることがあるといわれ、今日ではあまり行われません。
乳児の場合は手術せずに経過をみますが、1年たっても変わらない時や、だんだん大きくなっていく時や痛がる時は、小児科医に相談してください。
停留精巣、外鼠径ヘルニア
金子 一成
出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報
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いんのうすいしゅせいそうすいりゅう【陰嚢水腫(精巣水瘤) Hydrocele Testis】
[どんな病気か]
陰嚢内(いんのうない)の、睾丸(こうがん)(精巣)を包んでいる膜(まく)(精巣鞘膜(せいそうしょうまく))からリンパ液が過剰に分泌(ぶんぴつ)されることにより、鞘膜内にリンパ液がたまり、精巣鞘膜が膨らみ、陰嚢が鶏卵大に腫(は)れる良性の病気です。小児ではウズラの卵大のこともありますが、お年寄りではこぶし大になることもあります。類似疾患に、精索周囲の鞘膜にリンパ液がたまる精索水瘤(せいさくすいりゅう)があります。
[原因]
おもに精巣鞘膜のリンパ液の分泌過剰が原因ですが、新生児では、腹膜から連続する鞘状突起(しょうじょうとっき)があって、そのために腹腔内(ふくくうない)のリンパ液が鞘状突起内に流入し、陰嚢水腫を形成します。大部分の症例では、生後1年以内に腹膜との交通は自然閉鎖し、精巣鞘膜腔(せいそうしょうまくくう)が形成されるので、1歳までは経過観察します。
フィラリア原虫によってリンパ管が閉塞(へいそく)されたために陰嚢が腫大(しゅだい)し、巨大な陰嚢水腫になることもあります。
[症状]
ふつう無症状ですが、ときに不快感や膨らんだ感じを訴えます。本人か母親が陰嚢の腫れに気づいて受診することが多いものです。
[検査と診断]
触診では、陰嚢の表面が滑らかで、やややわらかい感じがします。大きさはウズラの卵大からこぶし大まで、さまざまです。
圧痛はなく、懐中電灯で透かしてみるときれいに睾丸が透けて見えます。超音波検査をすればはっきりわかります。注射針で内容液を穿刺(せんし)し、内容液が黄色の透明であれば、陰嚢水腫と診断できます。
精巣腫瘍(せいそうしゅよう)も痛みがないので、これとの鑑別が必要です。精巣腫瘍では透光性はありません。副睾丸炎(ふくこうがんえん)(精巣上体炎(せいそうじょうたいえん))、睾丸捻転症(こうがんねんてんしょう)(精巣捻転症)では、著しい圧痛がありますが、透光性はありません。
[治療]
最初の治療では、注射針による穿刺で、すべての内容液を吸引します。小児は、1~2回の穿刺吸引で多くは治癒(ちゆ)します。
成人では、何度穿刺吸引をくり返しても治らないことが多いものです。この場合は手術し、精巣鞘膜を切除すれば再発しません。
小児では、精巣鞘膜が腹腔内と通じていることがあり(鞘状突起)、この場合は手術して交通路を遮断し、精巣鞘膜を切除しなければ治癒しません。
しかし、1歳未満では、自然治癒する可能性があるので、経過を観察し、1歳を過ぎてから手術を考えます。
出典 小学館家庭医学館について 情報
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