日本大百科全書(ニッポニカ) 「陳羣」の意味・わかりやすい解説
陳羣
ちんぐん
(?―235)
中国、三国魏(ぎ)の官僚。字(あざな)は長文(ちょうぶん)。潁川(えいせん)郡許(きょ)県(河南(かなん)省許昌(きょしょう)市の東)の人。曹操(そうそう)を支え、やがて殺された荀彧(じゅんいく)の娘婿。はじめ劉備(りゅうび)に仕えたが、劉備が献策に従わず豫(よ)州を失ったため、曹操に仕えた。荀彧の後継者として人事担当官を中心に順調に出世し、のち監察系統の官職に移った。曹操の後継者争いのときには、儒教の嫡長子相続という経義(けいぎ)に基づき、一貫して曹丕(そうひ)を支持した。根底に「孝」を置く名士の人物評価を反映させた官僚登用制度である九品中正(きゅうひんちゅうせい)制度を曹丕に献策し、即位直後に曹丕(文帝(ぶんてい))はこれを採用した。この制度は、郡ごとに置かれた中正官が、任官希望者に一品から九品までの郷品(きょうひん)をつけ、それぞれの郷品から原則として四品さがった官品(かんぴん)の官職から、官僚としての履歴を開始し、順調にいけば、それぞれの郷品と同じ官品の官職まで出世できる。九品中正制度は、三国に続く西晋(せいしん)、東晋(とうしん)そして南北朝(なんぼくちょう)時代の貴族制を制度面から保証することになる。
[渡邉義浩]
『渡邉義浩著『「三国志」軍師34選』(PHP文庫)』