翻訳|aristocracy
社会的身分、血統、門地、財産などによって特権をもつ少数者が支配する政治体制。1人の人間が支配する王制(モナーキー)、多数者が支配する民主制(デモクラシー)とともに典型的な政治形態の一種で、古代ギリシア・ローマなどの社会で多くみられた。プラトンは貴族制を推奨し、ギリシア語のアリストクラティアとは最善者の支配を意味した。英語のアリストクラシーはこのアリストクラティアの転化したものといわれる。貴族制は、近代国家の成立以後、民主政治に敵対するものとして、王制とともに否定されていく。ところで、貴族制という用語は、社会的身分または名誉の称号として貴族を置く制度をさす場合もある。中世封建社会、とくに絶対王制が確立してくるなかで封建領主などに貴族の称号が与えられ、彼らは身分制議会の貴族院において僧侶(そうりょ)身分とともにその主要な構成員となるが、この制度は今日のイギリスにおいても持続している。また第二次世界大戦前の日本においては、皇族、華族、勅任された議員が、帝国議会の一院である貴族院を構成し天皇制擁護の一翼を担っていた。しかし、このような特権的・非民主的な制度としての貴族院は、戦後、日本国憲法の制定とともに廃止され、かわって新たに民選の参議院が創設された。
[田中 浩]
語源的にいえば,きわめて優れた者の支配を意味するが,ギリシアの政体論では優れた少数者の支配する良き政体を意味した。それは富を根拠とする少数者支配である寡頭制,金権政治に対比させられる。この人材の卓越性を唯一の基準とする貴族制はその後,世襲的に法的・社会的特権をもつ貴族の支配へとその意味を変えていき,一方で王,他方で民衆の支配に対立することになる。しかしながら優れた者の支配としての貴族制の理念は,生れに対する能力の重視という形で生きつづけ,貴族制概念はそれ自体内部的緊張をはらみつづけた。これは王政や民主主義とも両立する。そして民主主義の下にあっても,優れた人物が選挙等の手続きを経て統治に携わることは,民主主義にとって重要なことである。機能的概念としての貴族制は,貴族の歴史的実在とは別に,今なお重要な役割を果たすものであることは否定できない。
執筆者:佐々木 毅
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…旧大名は公卿とともに華族の地位を与えられ,華族には華族令によって一定の世襲財産・特権・貴族院議員たり得る資格が付与されたが,1946年,憲法によってこの華族制度も三分の二世紀ほどの歴史を閉じた。日本において貴族制度がこのように根づかず,貴族文化といったものの発展もなく,またイギリスのパブリック・スクールやオックスフォード,ケンブリッジ両大学のような貴族の子弟のための学校もほとんど発達しなかった事実は,ヨーロッパ社会との対比において特徴的である。また,徳川260年にわたる封建身分制の固定化にもかかわらず,明治以後における近代産業の担い手としてのブルジョアジーの発生源が旧支配階級に限定されることなく,旧町人および農民からも広く輩出したことがたしかめられており,日本の近代化の初期段階からすでに階級間の流動性・機会均等性が比較的よく実現されていたことを示している。…
※「貴族制」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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