改訂新版 世界大百科事典 「陶作部」の意味・わかりやすい解説
陶作部 (すえつくりべ)
大化前代の職業部で須恵(陶)器の製作に従事。須恵器の源流は朝鮮半島南部に求められている。また陶部ともつくる。《日本書紀》垂仁3年条に,近江国鏡谷の陶人は新羅王子天日槍(あめのひぼこ)の従人であると伝え,また雄略7年条には百済より貢上せしめた工人中に新漢陶部高貴(いまきのあやのすえつくりこうき)の名がある。前者は新羅系,後者は百済系製陶技術者の渡来を物語るものと考えられる。これら渡来系工人による須恵器の製作は5世紀初めころ,茅渟(ちぬ)県陶邑すなわち大阪南部丘陵地帯で開始されるが,5世紀後半から6世紀になると生産地が地方に拡大する。しかし陶部の分布を推測させる8~9世紀の史料がほとんど存在しないことから,これらの地方の須恵器生産が,朝廷の陶部とかかわりがあるのかどうか明らかでない。また伴造(とものみやつこ)の名も明らかにしがたい。
執筆者:新井 喜久夫
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