集団免疫(読み)シュウダンメンエキ(英語表記)herd immunity

デジタル大辞泉 「集団免疫」の意味・読み・例文・類語

しゅうだん‐めんえき〔シフダン‐〕【集団免疫】

社会において、ある感染症への免疫を持つ人が多数を占めることで生じる、集団的な免疫効果。先に感染して自力回復した人や予防接種を受けた人が増えると、新たな感染源が発生しても連鎖する可能性が低くなり、結果的に無免疫者への感染が抑えられる。乳幼児高齢者AIDS患者など免疫弱者を守る効果がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「集団免疫」の意味・わかりやすい解説

集団免疫
しゅうだんめんえき

ある集団が、感染症の流行を集団内で予防できるほど高い免疫保持率をもっている状態。

 どの程度の人が免疫を保持しているとそうした状態になるかの目安としては、それぞれの感染症において推定された基本再生産数R0(Rノートとよばれる)から「1-(1/R0)」の式により算出される。たとえば麻疹(ましん)では、R0が15前後と推定されており、当てはめると1-(1/15)で0.93となる。つまり、集団の93%より多くの人が免疫を保持していると、その集団では麻疹の感染が拡大する可能性が低下するということである(もちろん、感染者が出ないということではない)。

 かつての天然痘(てんねんとう)(痘瘡(とうそう))の流行下でもみられたように、集団のなかでも感染しない人がいたが、そうした人は、集団のなかで感染した人が増加し、徐々に集団のなかで免疫が得られたことで、それ以上の感染拡大がなく、集団免疫によって感染から守られた状態になったと考えられる。なお、こうした集団免疫の状態はワクチン接種によっても達成することができるが、免疫がどの程度維持されるかにも依存する。

 集団免疫という語が広く一般にも知られるようになったのは、2019年に中国で初めて確認され、その後世界中に感染が拡大した新型コロナウイルス感染症(COVID(コビッド)-19)の流行を受けてであるが、新型コロナウイルス感染症においては、ワクチンによって集団免疫の効果が得られるかどうかは不確定である。ワクチンによる集団免疫によって自らが守られることを期待するというよりは、現段階では、ワクチンを接種できる対象年齢の人は積極的に接種を行って、自分自身を守ることを考えるべきだろう。

[和田耕治 2021年10月20日]

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知恵蔵mini 「集団免疫」の解説

集団免疫

多くの人が予防接種によって免疫を獲得することで、ウイルスや細菌による感染症の蔓延が防止できる間接的な予防効果のこと。子どもなど一定割合の集団にワクチンを打つ取り組みを続けると、免疫のない者と感染者の接触する確率が低くなり、社会全体での感染症の流行を防ぐことが可能になる。免疫力が低いために予防接種を受けられない新生児や免疫不全の人、重症化する可能性がある高齢者などを感染から守ることにもつながるとして、医療関係者から重要性が指摘されている。

(2018-1-30)

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