日本大百科全書(ニッポニカ) 「雨水利用推進法」の意味・わかりやすい解説
雨水利用推進法
あまみずりようすいしんほう
雨水の有効利用を推進するための法律。気候変動や都市化などの影響による水環境の悪化を踏まえ、国などの責務を明らかにし、また、水洗便所や散水などで雨水の利用を推進するとともに、雨水を都市に貯留させることによって河川などへの集中的な流出を抑制することを目的とする。2014年(平成26)3月成立、同年5月に施行された。正式名称は「雨水の利用の推進に関する法律」(平成26年法律第17号)。同法にあわせ、水資源の保全を目的とする「水循環基本法」(平成26年法律第16号)も施行された。降水量が1時間に50ミリメートルを超えるようなゲリラ豪雨が年々増加する一方、宅地造成によって雨水が地下へ浸透せず、下水道や河川などに一気に流出するため、浸水被害が起こりやすくなっている。雨水利用推進法では、「雨水は流せば洪水、受けてためれば資源」という考えにたち、(1)国の建造物などに貯留施設に関する設置目標を設定する、(2)地方自治体による助成制度を国が財政支援する、(3)調査研究の推進および技術者の養成に努める、などが骨子となっている。
日本の雨水や再生水の利用は、昭和30年代後半から始まり、昭和50年代に福岡市などで渇水が相次いだことをきっかけに、全国的に雨水の有効利用の取組みが広がった。その後も雨水や再生水の利用施設は着実に増加しており、2010年度では全国におよそ3600の利用施設があり、年間2億6000万立方メートルが使用されている。利用施設の約8割では、水洗便所用などの雑用水として使われた。同法により国や独立行政法人などでは、最下階床下などに雨水の一時的な貯留に活用できる空間を有する新築建造物については、雨水利用施設の設置率を原則100%にするという基本方針が示されている。また、地域では公園や防災施設、集合住宅、大規模建築物のほか、民間住宅においても、それぞれの土地の状況を考慮し、雨水の浸透や貯留・利用に関し、融資や税制面で優遇・助成する制度が設けられた。
[編集部]