日本大百科全書(ニッポニカ) 「雪腐病」の意味・わかりやすい解説
雪腐病
ゆきぐされびょう
北海道、東北、北陸地方などの積雪地帯に発生するムギ類やイネ科牧草の病気。積雪下で病原菌が繁殖し、葉や茎が侵され、熱湯をかけたように水浸状になって腐る。被害を受けた葉や茎は雪融(ど)けと同時に灰白色から淡桃色に変わり、被害がひどいときは畑全面が灰白色を呈するほど全部の茎葉が枯れる。これは日数の経過とともにしだいに回復するが、生育が遅れ、収量が少なくなる。病原は糸状菌(カビ)で、正確には病原菌の種類によって、雪腐褐色小粒(こつぶ)菌核病(病原菌はTyphula incarnata)、雪腐黒色(こくしょく)小粒菌核病(Typhula ishikariensis)、雪腐大粒(おおつぶ)菌核病(Myriosclerotinia borealis)、紅色(こうしょく)雪腐病(Monographella nivalis)、褐色雪腐病(Pythium iwayamaiその他数種のピシウムPythium属菌)などに区別されており、病徴や分布などが異なるが、一般には、これらを総称して雪腐病とよんでいる。雪腐褐色小粒菌核病、紅色雪腐病の分布が広く、雪腐黒色小粒菌核病、雪腐大粒菌核病は北海道および東北、関東地方の一部に発生が限られている。ムギの品種や牧草の草種によって発病に差があるので、強い品種を栽培するほか、根雪前に殺菌剤(メプロニル剤、トリアジメホン剤、チオファネートメチル剤など)を散布して防ぐ。
[梶原敏宏]