日本大百科全書(ニッポニカ) 「電磁波測距儀」の意味・わかりやすい解説
電磁波測距儀
でんじはそっきょぎ
electromagnetic distance meter
電波や光、レーザー光などを用いて距離を直接測定する装置。目標地点に反射鏡やプリズムを置き、電波や光波が反射して帰ってくるまでの時間を正確に測って距離を求める。実際には、電波や光波の波長を精密に定めておき、目標までの間に存在する波の個数をその端数まで正確に測る方式がとられている。測定距離も数十キロメートルに達するものもあり、精度も3キロメートルで1ミリメートル以内と、従来の三角測量より高精度のものまで得られている。
電磁波測距儀は、その用いる波長により、電波測距儀と光波測距儀とに分けられる。電波測距儀は、従来の電波探知機またはレーダーが改良されたものともいえ、テルロメーターなどがその代表例で、50キロメートル以上の長距離まで測定できるが、測定精度が低く、取扱いもめんどうだったため、やがて利用されなくなった。
光波測距儀は、目標点にコーナーキューブという反射プリズムを置いて測定するが、アメリカの月宇宙船アポロが月面に超精密なコーナーキューブを設置し、レーザー光で月面までの距離を精密に測定したこともある。精度は場合によって誤差1ミリメートル以下に達するが、到達距離は普通昼間では数キロメートル、夜間でも20キロメートル程度で、ジオディメータgeodimeter、メコメーターmeco-meterなどが代表例であった。
電磁波測距儀は、1970年代以降、地震予知のための地殻のひずみの精密な測定や、ダムの変形、三角網の精密な再測定などに実用され、また海外の大砂漠での測量に威力を発揮した。日本では、従来の三角辺より長大な辺長を電磁波測距儀で測って三角網を点検する辺長測量にも使われた。
21世紀に入ると、GPS測量が普及し、長距離用の電磁波測距儀は姿を消した。しかし局所的な測量では光波測距儀(もしくは測角機能も組み込んだトータルステーション)は引き続き主要な測量機器として利用されている。
[尾崎幸男・辻 宏道 2016年11月18日]