日本大百科全書(ニッポニカ) 「電解ソーダ法」の意味・わかりやすい解説
電解ソーダ法
でんかいそーだほう
electrolytic soda method
精製した食塩水を電気分解(電解)してカ性ソーダ(水酸化ナトリウム)と塩素を製造する方法をいい、隔膜法、水銀法、イオン交換膜法に大別される。
[米山 宏]
隔膜法
塩素、カ性ソーダの世界生産高の50%以上がこの方法によっている。鉄陰極と、金属チタンの薄板を酸化ルテニウムを主成分とする混合酸化物薄膜で被覆した陽極(DSA、DSE、金属陽極などともいわれる)との間に、アスベストなどの多孔性隔膜を配置し、電解槽を陰極室と陽極室に仕切る。飽和食塩水を陽極室に流し込み、溶液を陰極室から取り出すようにすると、まず、陽極室では塩素が発生する。溶液は塩化物イオン分が薄くなって陰極室に入る。陰極室では水素が発生して水酸化物イオンが生成し、ナトリウムイオンと反応してカ性ソーダが生成する。陰極室溶液は、カ性ソーダ8~10%に塩化ナトリウム12~18%を含み、これを蒸発・濃縮して塩化ナトリウムを析出・分離させ、濃度約50%のカ性ソーダ溶液を得る。塩化ナトリウムの混入は避けられず、この中に約1%含まれている。隔膜は、おもに陰極室から陽極室へ水酸化物イオンが移動するのを抑える働きをする。
[米山 宏]
水銀法
隔膜法に比べ高純度のカ性ソーダが得られるので、日本では1975年(昭和50)ころまでは、おもに本法が採用されていた。しかし、水銀による環境汚染の懸念から、隔膜法や新しく開発されたイオン交換膜法への転換が進められた。電解槽の床面に水銀を敷き、それに対向するように黒鉛陽極または金属陽極を配置し、その間に食塩水を通じて電解すると、陽極では塩素が発生し、陰極は0.2~0.5%のナトリウムを含むナトリウムアマルガムとなる。これを黒鉛粒子を充填(じゅうてん)した分解塔へ水とともに送り込むと、分解してカ性ソーダと水素が生成し水銀に戻る。
[米山 宏]
イオン交換膜法
高純度のカ性ソーダを製造する方法として開発されたものである。陽イオン交換膜を金属陽極と鉄陰極の間に入れて溶液を仕切り、陽極室側に食塩水、陰極室側に薄いカ性ソーダ水溶液を流して電解する。電解によって、陽極上で塩素が発生するとともに、ナトリウムイオンはイオン交換膜を通って陰極室へ移動する。陰極では水素が発生し、同時に水酸化物イオンが生成するので、陰極室で濃厚なカ性ソーダ水溶液が得られる。
[米山 宏]
『塩川二朗編『無機工業化学』(1980・化学同人)』▽『日根文男著『電気化学反応操作と電解槽工学』(1979・化学同人)』