日本大百科全書(ニッポニカ) 「霍小玉伝」の意味・わかりやすい解説
霍小玉伝
かくしょうぎょくでん
中国、唐代の伝奇小説。蒋防(しょうぼう)作。中唐期の著名な詩人で、いわゆる大暦十才子(たいれきじっさいし)の一人である李益(りえき)(748―829?)を主人公とする。李益は若いころ、落魄(らくはく)の貴婦人、霍王の娘と称する小玉と将来を誓うが、のち母親に勧められるままに従妹(いとこ)の盧氏(ろし)をめとる。やがて李益は、ある男の計らいで、傷心のあまり病床につくようになった小玉のもとを訪れるが、小玉は怨(うら)みのことばを残して息絶えた。その後李益はたいへんな焼きもち焼きになり、妻を何度かめとったが、いずれも彼の嫉妬(しっと)によって不幸な最期を遂げてしまう。この物語は、作者蒋防が、時の政界において、反対派に属していた李益を嘲笑(ちょうしょう)するためにつくったものともいわれる。
[高橋 稔]
『高橋稔・西岡晴彦訳『中国の古典32 六朝・唐小説集』(1982・学習研究社)』