民俗芸能。神楽の一種で霜月(旧暦11月)に行われる湯立(ゆだて)神楽。伊勢神宮外宮の御師(おし)たちが霜月に行った寄合神楽や奉納神楽が全国に流布したといわれ,伊勢流神楽とも呼ばれる。奥三河地方の花祭,お潔め祭,信濃の遠山祭,冬祭,秋田県横手市の旧大森町の保呂羽(ほろは)山波宇志別(はうしわけ)神社で演じられるものなどが著名。いずれも釜に湯をわかし,祈禱ののち参集者に湯をふりかけて禊祓いをする。神事の庭には神座として御幣などによる神籬(ひもろぎ)が飾られ,天井には白蓋(びやつかい),大乗(だいじよう),雲などの名で呼ばれる天蓋(てんがい)を下げ,周囲には注連縄(しめなわ)や切紙飾がなされる。湯立や神々への献湯には多くの神歌(かみうた)がうたわれ,その間に採物(とりもの)の舞や面形の舞などが夜を徹して演じられる。
執筆者:山路 興造
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
…この流派が最も広く分布しているが,高千穂神楽では採物神楽に傾き,江戸の里神楽では神話のことごとくを黙劇に仕組むというように能に傾いている。(3)湯立神楽は神聖な湯花に触れて祝福を得ようとするもので,伊勢神宮外宮(げくう)の御師(おし)と呼ぶ外勤神職団によって広められ,伊勢流と呼ばれているが,今は伊勢になく,秋田県平鹿郡の保呂羽山波宇志別神社の霜月神楽や愛知県の花祭などに残されている。湯釜をすえて神々を勧請(かんじよう)し,数々の潔(きよ)めの舞を舞い,ときには見物人に湯花を振りかけるのである。…
…この歌が歌われた神楽は,釜の湯を神に献じて,その湯で人々の魂を清める湯立神楽で,もと外宮各社で行っていた社(やしろ)神楽が霜月の寄合神楽にまとめられたものだと言う。この系統を伝えるのが,秋田県保呂羽山の霜月神楽,伊豆の三宅島・八丈島等の湯立神楽,長野県の遠山祭や冬祭,愛知県の花祭など,霜月を中心に伝承されている湯立神楽で,いずれも数多くの神歌を伝えている。長野県新野(にいの)の雪祭には〈宣命(せんみよう)〉という神降しの演目があり,この曲はまた,神歌とも呼ばれている。…
…近世に,浄土宗が灌仏会を花祭と称してから,この名称が一般に広まった。 民俗学では,花祭といえば灌仏会のことではなく,愛知県北設楽郡を中心に長野・静岡・愛知の県境の二十数ヵ所に分布する霜月神楽(しもつきかぐら)をいうことが多い。花祭は花神楽ともいわれ,現在では十数ヵ所に減り,祭日も旧霜月から1月初旬に変わり,内容もしだいに略化されつつある。…
※「霜月神楽」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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