飛騨天文台(読み)ひだてんもんだい

日本大百科全書(ニッポニカ) 「飛騨天文台」の意味・わかりやすい解説

飛騨天文台
ひだてんもんだい

京都大学大学院理学研究科附属の天文台。岐阜県飛騨(ひだ)地方の高山市上宝(かみたから)町蔵柱(くらばしら)の、北アルプスを一望できる標高1280メートルの台地にある。京都大学理学部における天体観測は、1960年代まで主として花山天文台で行われていたが、京都市の急激な都市化によって観測環境が悪化したため、1963年(昭和38)ごろから新天文台候補地調査が実施され、1968年に飛騨天文台が設立された。花山天文台から移転した60センチメートル反射望遠鏡に加えて、1972年にレンズの望遠鏡としては東洋一の65センチメートル屈折望遠鏡が建設されて、地上からの惑星観測の拠点として活躍している。とくに火星表面の精密観測データが長期にわたって蓄積されてきているのは世界的にも例がなく、火星の気候変動を研究するうえで貴重なデータとなっている。1979年には世界第一級の高分解能をもつドームレス太陽望遠鏡が完成して、太陽活動の研究が盛んに行われるようになった。ドームレス太陽望遠鏡は毎年全国公募によって京都大学以外の研究者にも広く利用されており、日本の地上光学太陽観測の中心的役割を果たしている。1992年(平成4)には太陽フレア監視望遠鏡が設置されて、太陽フレアプロミネンス紅炎爆発の観測体制が強化され、これらの地球への影響を調べる研究も盛んに行われるようになった。さらに、2003年には新太陽磁場活動望遠鏡が建設された。この望遠鏡は太陽全面にわたる高分解能のHα像とベクトル磁場像を同時に観測できる特長をもっており、太陽表面爆発現象のメカニズムや太陽活動の周期的変動の研究にとって、重要なデータが得られ始めている。また2000年以降、飛騨天文台では、60センチメートル反射望遠鏡による激変星の測光観測も盛んに行われている。

[黒河宏企]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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