プロミネンスともいう。太陽表面より数千~数万kmの高さに浮かぶガス体。皆既日食のときに,肉眼でも観察でき赤い炎のように見えるので,この名がある。形の特徴は細長いことで,水素の発するHα線(6563Å)のみを通すフィルターで観測すると,太陽面上に暗い細長い筋となって見えるので別名暗条とも呼ばれる。寿命は2~3ヵ月であるが,数時間の短命のものもある。紅炎の発する放射は,太陽面の縁で観測するとH,He,Mg,Ca,Feなどの中性原子や1回電離したイオンの発する多数の輝線として見られる。紅炎の温度は4500~8000Kで,密度は10⁻13g/cm3程度である。紅炎を取り囲むコロナは2×106Kの高温だが,密度は紅炎の1/100にすぎない。紅炎の温度が光球(6000K)や彩層(6000~104K)の温度に近い理由は,光球,彩層からの紫外線を含む光を吸収し,それを再放出してエネルギーのバランスを保っているためである。化学組成は太陽本体と同様に原子数の比で約9割が水素,残りの大部分がヘリウムと推定されている。紅炎では,数ガウスから100ガウスほどの磁場が観測されている。コロナに比べて高密度の紅炎がコロナ中に浮かんでいられるのは,この磁場の張力(磁気張力)が重力のために落下しようとするガスを支えているためと考えられている(図1)。紅炎は激しい上昇運動を起こして消失することがあり,その速度は太陽の引力圏を脱出できる618km/sを超えることもある。これは,光球と紅炎内部の磁気張力が強くなり,重力に打ち勝ったためと推論されている。消失した紅炎と同じ位置に再び紅炎が発生することが多い。
紅炎にはいろいろの種類があり,黒点近くに発生する活動域型紅炎と,黒点から遠く離れて存在する静穏型紅炎に大別することができる。後者は長いものは20万km以上になるが,幅が5000kmときわめて狭く背丈が3万kmと高い。前者は長さはたかだか20万kmで太陽表面をはうようにして浮かんでおり,背丈は1万km以下で低い。そのほかに特別の型としてサージ型紅炎とループ型紅炎がある。サージ型紅炎は黒点近傍に発生し,火柱のように数十~数百km/sの速度で噴出し,噴出してきた同じ道筋を通って落下することが多い。ループ型紅炎は一種の過渡状態にあるタイプである。フレア(太陽面爆発)が起こるとコロナが2000万度の超高温になり,かつふだんの10~100倍もの高密度になるが,それが6000K程度まで冷えて半円状の磁力線に沿って落下しつつある状態がループ型紅炎である。紅炎の発生の原因は,ループ型紅炎を除いてまだ明らかにされていない。
執筆者:平山 淳
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