紅炎(読み)コウエン

デジタル大辞泉 「紅炎」の意味・読み・例文・類語

こう‐えん【紅炎/紅×焔】

くれないの炎。
太陽彩層からコロナの中に立ち上る炎状のガス。皆既日食のときは望遠鏡で、平時は分光望遠鏡で見ることができる。形や大きさはさまざまで、寿命は数分から数か月に及ぶものまである。プロミネンス
[類語]ほのおほむら火炎かえん光炎こうえん火柱ひばしら火先ほさき火の気火気種火火種口火発火点火着火火付き火加減火持ち残り火おき燠火おきび埋み火炭火火の粉火花火玉花火焚き火迎え火送り火野火

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精選版 日本国語大辞典 「紅炎」の意味・読み・例文・類語

こう‐えん【紅炎・紅焔】

  1. 〘 名詞 〙
  2. くれないの炎。盛んに燃える炎。また、その色。
    1. [初出の実例]「悪風のこうえんの旗をなびかし」(出典:車屋本謡曲・箙(1478頃))
    2. [その他の文献]〔史延清‐明日賜百寮新火詩〕
  3. 太陽の彩層から噴出している真赤な炎状の気体。プロミネンス。
    1. [初出の実例]「太陽の黒点や紅焔やコロナを描いたものなどは丸で嘘だらけなものであった」(出典:断水の日(1922)〈寺田寅彦〉)

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改訂新版 世界大百科事典 「紅炎」の意味・わかりやすい解説

紅炎 (こうえん)
prominence

プロミネンスともいう。太陽表面より数千~数万kmの高さに浮かぶガス体。皆既日食のときに,肉眼でも観察でき赤い炎のように見えるので,この名がある。形の特徴は細長いことで,水素の発するHα線(6563Å)のみを通すフィルターで観測すると,太陽面上に暗い細長い筋となって見えるので別名暗条とも呼ばれる。寿命は2~3ヵ月であるが,数時間の短命のものもある。紅炎の発する放射は,太陽面の縁で観測するとH,He,Mg,Ca,Feなどの中性原子や1回電離したイオンの発する多数の輝線として見られる。紅炎の温度は4500~8000Kで,密度は1013g/cm3程度である。紅炎を取り囲むコロナは2×106Kの高温だが,密度は紅炎の1/100にすぎない。紅炎の温度が光球(6000K)や彩層(6000~104K)の温度に近い理由は,光球,彩層からの紫外線を含む光を吸収し,それを再放出してエネルギーのバランスを保っているためである。化学組成は太陽本体と同様に原子数の比で約9割が水素,残りの大部分ヘリウムと推定されている。紅炎では,数ガウスから100ガウスほどの磁場が観測されている。コロナに比べて高密度の紅炎がコロナ中に浮かんでいられるのは,この磁場の張力(磁気張力)が重力のために落下しようとするガスを支えているためと考えられている(図1)。紅炎は激しい上昇運動を起こして消失することがあり,その速度は太陽の引力圏を脱出できる618km/sを超えることもある。これは,光球と紅炎内部の磁気張力が強くなり,重力に打ち勝ったためと推論されている。消失した紅炎と同じ位置に再び紅炎が発生することが多い。

 紅炎にはいろいろの種類があり,黒点近くに発生する活動域型紅炎と,黒点から遠く離れて存在する静穏型紅炎に大別することができる。後者は長いものは20万km以上になるが,幅が5000kmときわめて狭く背丈が3万kmと高い。前者は長さはたかだか20万kmで太陽表面をはうようにして浮かんでおり,背丈は1万km以下で低い。そのほかに特別の型としてサージ型紅炎とループ型紅炎がある。サージ型紅炎は黒点近傍に発生し,火柱のように数十~数百km/sの速度で噴出し,噴出してきた同じ道筋を通って落下することが多い。ループ型紅炎は一種の過渡状態にあるタイプである。フレア太陽面爆発)が起こるとコロナが2000万度の超高温になり,かつふだんの10~100倍もの高密度になるが,それが6000K程度まで冷えて半円状の磁力線に沿って落下しつつある状態がループ型紅炎である。紅炎の発生の原因は,ループ型紅炎を除いてまだ明らかにされていない。
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「紅炎」の意味・わかりやすい解説

紅炎[太陽]
こうえん[たいよう]
solar prominence

プロミネンスともいう。太陽彩層から外へ,炎のように突き出している輝く気体。皆既食のときには肉眼でも見える。最初に発見したのは B.バッセニウス (1733) で,1868年 P.ジャンセンや,J.ロッキャー発明による分光器によって日食時以外にも紅炎を見られるようになった。平らに浮んでいる静態紅炎 (→静かな紅炎 ) ,爆発的に吹上げる噴出状紅炎とに分けられ,後者は秒速数百 kmの速さで,数十万 kmにまで上昇することがある。

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百科事典マイペディア 「紅炎」の意味・わかりやすい解説

紅炎【こうえん】

プロミネンスとも。太陽表面から数千〜数万kmの高さにあるガス体。皆既日食のとき肉眼でも赤い炎のように見えるのでこの名がある。水素スペクトルのHα線の単色光で太陽を観測すると,太陽面上に暗い細長い筋となって見えるので暗条ともいう。静隠型紅炎と活動域型紅炎に大別される。前者は形状の時間的変化が少ないもので,紅炎物質は下降運動をしており,コロナから流下するように見えるものもある。後者は形状が時間的に大きく変化し背丈が高い。そのほか特別な型として,火柱のように噴出するサージ型紅炎やループ型紅炎がある。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「紅炎」の意味・わかりやすい解説

紅炎
こうえん

プロミネンス

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