国指定史跡ガイド 「高屋敷館遺跡」の解説
たかやしきだていせき【高屋敷館遺跡】
青森県青森市浪岡にある平安時代後期の集落跡。濠と土塁をめぐらして外部からの攻撃を防御する、いわゆる環濠集落としてとくに規模が大きい。以前は中世の城館跡と見られていたが、国道バイパス建設にともなう発掘調査によって古代のものとわかり、バイパスが路線を変更することで遺跡全体が保存され、2001年(平成13)、国指定史跡となった。南北約100m、東西約80mに広がり、西側には、幅約6m、深さ約3mの濠がめぐらされ、外側に幅約2m、現状の高さ約1mの土塁が築かれて集落を外部から遮断する形になっている。濠の西側に土塁の切れ目があり、南西部にも木の橋が架けられて、出入り口が設けられていたと見られる。濠の内部は大小の竪穴(たてあな)住居が重なって密集し、現在86棟が確認されている。ほかにも多数の住居跡が存在し、多くの人々が長期にわたって生活したことがしのばれる。鉄滓が出土した住居もあり、鍛冶工房だったと考えられる。土器のほか、鉄製品、木製品が豊富に出土している。遺跡北側にはこの遺跡に先行する時期の円形周溝遺構などがあり、高屋敷館遺跡成立以前の状況も具体的に推定されている。東北地方の北部以北の地域は律令国家の直接的な支配が及ばない地域であり、11世紀後半には前九年・後三年の役など東北地方の戦乱もあり、それ以前から、蝦夷(えみし)の集団相互の抗争もあったと想像されている。JR奥羽本線浪岡駅から車で約8分。