藻体に炭酸カルシウム(石灰)を沈着する藻類の総称で,代表的なものに紅藻植物のサンゴモ,ガラガラ,コナハダ類,緑藻植物のサボテングサ,カサノリ類などがある。淡水産の車軸藻植物も少量であるが石灰を沈着し,海および淡水に生育する単細胞性のハプト植物の多くも,細胞の表面にコッコリス(円石)と呼ぶ独特な形の石灰質の鱗片をもつ石灰藻である。多細胞の藻類では,石灰は細胞間隙(かんげき)に沈着する。含有する石灰の量はサンゴモ類が多く,藻体乾燥重量の65~70%に及び,次いでガラガラ類で約60%である。石灰藻がもつ石灰には結晶の形や物理的性質の異なる2種類があり,一つは方解石calcite,他の一つはアラレ石aragoniteと呼ばれる。興味あることに,サンゴモ類とハプト藻類は方解石をもつのに対し,他の石灰藻はおもにアラレ石を含有する。石灰を最も多量に含む石灰藻は無節サンゴモ類で,熱帯地方でサンゴ礁の成立に重要な役割を果たしている。
執筆者:千原 光雄 石灰藻の絶滅生物には,紅藻植物とされるソレノポラ科,エピヒトン科,古代サンゴモ科や緑藻植物とされるレセプタクリテス科などがある。ラン藻植物や緑藻植物の藻体の枯死後に残された堆積粒子がつくるストロマトライトを,非骨格性石灰藻とよび,狭義の石灰藻(骨格性石灰藻)と対応させ,広義の石灰藻に含める意見もある。
石灰藻の遺骸は,化石として保存される機会に恵まれ,密集すれば石灰岩となり,造岩植物として堆積分化作用に大きな働きをする。礁は浅海における代表例で,紅藻や緑藻の石灰藻はイシサンゴ類,硬骨海綿類,有孔虫類などとともに造礁生物の主要メンバーである。現生のサンゴ礁の風上側にしばしば発達する石灰藻嶺は,サンゴモ科のポロリトン属,イシゴロモ属などが皮状に重なり合ってつくったもので,かつて永らくリソザムニウム嶺(れい)と誤称されていた。イシモ属Lithothamniumは,100m以浅の海底で直径数cm前後の藻球をつくることが多い。石灰藻の炭酸カルシウムの鉱物種(アラレ石,高マグネシウム方解石,低マグネシウム方解石の3種類)は,沈着する部位やでき上がる石灰組織の微細構造と同様,生育環境とは無関係に各分類群ごとで決まっている。
なお,水産学で磯焼けと称するものは,この石灰藻類が磯に繁茂して一面に白くなる現象をさす。
執筆者:小西 健二
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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