鶏(にわとり)の鳴きまねをして人を欺いたり、狗(いぬ)のように忍び込んで物を盗むことしかできない者の意で、つまらないことしかできない下賤(げせん)な者をいう。中国、戦国時代の斉(せい)の公族で賢人として知られた孟嘗君(もうしょうくん)が、秦(しん)の昭襄(しょうじょう)王に捕らえられたとき、王の寵姫(ちょうき)にとりなしを頼み、謝礼として狐白裘(こはっきゅう)を要求されたが、先に王に献上してかわりがなかったため、嘗君は、イヌのように盗みのうまい食客にこれを盗ませ、寵姫に献上して難を逃れることができた。また、天下の険として知られた函谷関(かんこくかん)では、ニワトリの鳴きまねのうまい食客の働きで関を開かせ、無事脱出したと伝える『史記』「孟嘗君伝」の故事による。転じて、とるにたらない小人物でも使い方によっては役だつという意に用いられる。
[田所義行]
出典 四字熟語を知る辞典四字熟語を知る辞典について 情報
…秦の昭王は彼の賢なることを聞き,前299年に宰相とするために秦に招き,ついで殺そうとしたが,食客のはたらきで危地を脱し,無事斉に帰り着いた。これが有名な鶏鳴狗盗(けいめいくとう)の故事である。のち斉のみならず魏の宰相にも任ぜられたが,前284年以後は自立して諸侯となり,薛で没した。…
※「鶏鳴狗盗」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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