家庭医学館 「黄体機能不全」の解説
おうたいきのうふぜん【黄体機能不全 Luteal Insufficiency】
黄体とは、卵巣(らんそう)において排卵(はいらん)の後に形成される組織で、エストロゲンとプロゲステロンという2つの女性ホルモンを分泌(ぶんぴつ)します。
これらのホルモンは、増殖した子宮内膜(しきゅうないまく)にはたらきかけ、分泌期内膜(受精した卵子(らんし)が着床しやすい状態の子宮内膜)へと分化させるはたらきがあります。
このはたらきが十分でない状態を、黄体機能不全といいます。
[検査と診断]
簡単な検査法は、基礎体温(コラム「基礎体温とは」)の測定です。
基礎体温表をつけてみて、高温相が短く9日以内のとき、また高温相と低温相の温度差が0.3度以内のときは、黄体機能不全と診断されます。
基礎体温でわかる黄体機能不全の代表例は、(グラフ「黄体機能不全のときの基礎体温の例」)に示したように、①階段型、②陥落型、③短縮型、④低温型などがあります。
しかし、基礎体温の測定は、測定方法や測定器具(水銀やデジタル)、測定環境(部屋の寒暖など)などによる誤差があるため、女性ホルモン値の測定や、子宮内膜の日付け診断を行ない、総合的に診断することがたいせつです。
[治療]
黄体機能不全に対する治療法は、直接黄体を刺激して機能を活性化させる方法(排卵後にhCG製剤を注射する)と、女性ホルモンを補充する方法があります。
女性ホルモンを使用する場合は、卵胞(らんぽう)ホルモン分泌不全型、黄体ホルモン分泌不全型、全黄体機能不全型に分類したうえで治療を行ないます。
また、排卵の状態をよくするために、卵巣機能不全の治療に準じて、クエン酸クロミフェンや漢方薬も使われます。