鼻咽腔炎(読み)びいんくうえん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「鼻咽腔炎」の意味・わかりやすい解説

鼻咽腔炎
びいんくうえん

鼻咽腔粘膜にみられる炎症をいう。鼻腔の後端で咽頭に通ずる後鼻孔から軟口蓋(なんこうがい)までの部分を鼻咽頭または上咽頭、咽頭鼻部ともいい、この部分の腔所を鼻咽腔とよんでいる。鼻咽腔炎は急性と慢性に分けられ、慢性鼻咽腔炎はさらに単純性と萎縮(いしゅく)性に細分される。

[河村正三]

急性鼻咽腔炎

ウイルス(とくにインフルエンザ、パラインフルエンザ、ライノウイルスアデノウイルス)や細菌(とくに連鎖球菌、肺炎球菌、インフルエンザ菌)の感染によっておこる。鼻咽腔の乾燥感で始まることが多く、これが急性上気道感染の最初の兆候であることも少なくない。発熱があり、ときに頸部(けいぶ)リンパ節炎を伴う。鼻咽腔の粘膜が発赤、腫脹(しゅちょう)し、分泌物がみられる。治療は、安静にして解熱剤の投与を行う。細菌感染のあるときは抗生物質を投与する。

[河村正三]

慢性単純性鼻咽腔炎

塵埃(じんあい)、煤煙(ばいえん)、たばこの常用、鼻や扁桃(へんとう)の慢性疾患、アデノイドの残遺などが誘因となっておこる。青年期以後に多い。症状は、鼻咽腔の乾燥感、異常感、吸気性の鼻息いびき、後鼻漏(多量の鼻汁が後鼻孔から咽頭に流下していくもの)などで、鼻咽腔の粘膜が発赤し、粘液や膿(のう)を伴う。粘膜面が顆粒(かりゅう)状にみえることもある。治療には誘因の除去が重要で、局所治療としては鼻洗浄と薬液塗布を行う。

[河村正三]

慢性萎縮性鼻咽腔炎

萎縮性鼻炎を合併していることが多い。症状は乾燥感と鼻閉(鼻づまり)が強く、粘膜は乾燥して光沢がないこと以外は単純性の場合とほぼ同じである。痂皮(かひ)(かさぶた)が付着する。なお、梅毒でも同様な所見となることがある。治療は単純性の場合とほぼ同様に行われるが、完全に治癒させることはむずかしい。

[河村正三]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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