輝砒鉱(読み)きひこう(英語表記)arsenolamprite

日本大百科全書(ニッポニカ) 「輝砒鉱」の意味・わかりやすい解説

輝砒鉱
きひこう
arsenolamprite

半金属元素鉱物の一つ。自然砒およびパラ輝砒鉱pararsenolamprite(2001年、松原聰(さとし)(1946― )らによって大分県向野(むくの)鉱山から記載された新鉱物)とは同質異像関係にあるが安定関係は明らかでない。ただ本鉱の分析値でビスマス(Bi)の存在が指摘されているものもあり、またパラ輝砒鉱については5%内外のアンチモン(Sb)が報告されている。和名としてアーセノランプライトがそのまま用いられることもある。自形未報告。針状、葉片状のものが放射状集合をなす。塊状のこともある。

 炭酸塩岩中の方解石脈中に産する。また低温熱水鉱脈型銀鉱床に産し、銀鉱物と共存する。共存鉱物としては、自然砒、自然蒼鉛(そうえん)、自然銀、シュテルンベルグ鉱sternbergite(化学式AgFe2S3)、エムプレクト鉱、サフロ鉱砒鉄鉱、方鉛鉱、鶏冠石(けいかんせき)、雄黄(ゆうおう)(石黄(せきおう))、石英、方解石などがある。また低温噴気性ヒ素鉱床に産し、鶏冠石、雄黄などとともに産する。日本では産出未報告。同定は一方向に完全な劈開(へきかい)。一見、金属鉱物を思わせる灰白色、強い金属光沢。低い硬度など。空気中で速やかに錆(さ)び、光沢を失って表面黒化する。命名はヒ素とギリシア語の「光輝」の合成による。

加藤 昭 2016年3月18日]

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