日本大百科全書(ニッポニカ) 「AEO制度」の意味・わかりやすい解説
AEO制度
えーいーおーせいど
貨物のセキュリティ管理と法令遵守の体制が整備された事業者に対し、税関手続の緩和・簡素化などの優遇措置を与える制度。この事業者をAEO(Authorized Economic Operator)とよぶ。日本では認定事業者とよばれる。過去一定期間内に法令違反歴がないこと、適正かつ確実に業務を遂行できること、法令遵守規則の整備と実施が承認の要件とされる。2001年のアメリカ同時多発テロ以降、各国とも通関手続を厳しくしており、AEO制度は国際物流の安全性を損なわずに効率的に通関手続を進める制度として導入の動きが国際的に広がっている。
アメリカ政府は2001年にC-TPAT(Customs-Trade Partnership Against Terrorism)とよばれるAEO制度を導入し、世界税関機構(WCO:World Customs Organization)は2006年にAEOの世界標準ガイドラインを定めた。ヨーロッパ連合(EU)も2008年に導入、中国や韓国でも仕組みづくりが進んでいる。
AEOになると、貨物検査の回数が減り、輸出入に要する日数を短縮できる。日本では2001年(平成13)に輸入者が貨物到着前に輸入申告できるようにする簡易申告制度(2007年に特例輸入申告制度と名称変更)、2006年には輸出者を対象として自社内での輸出申告を可能にする特定輸出申告制度が制定され、AEO制度が始まった。その後、倉庫業者、通関業者、運送事業者へと対象を広げ、2009年度からは製造業も対象に含めた。これによりメーカーがAEOになれば、AEOではない商社を通して輸出しても同様の優遇措置を受けられる。2017年10月には、AEOならば全国どの税関でも輸出入申告が可能となった。2018年1月時点で650の日本企業がAEOに認定されている。
国際物流を一段と迅速・効率化するには、相手国のAEOについても手続を優遇する相互承認が必要とされる。このため日本の財務省は2008年にニュージーランドと相互優遇協定を締結し、これを皮切りにアメリカ、カナダ、EU、韓国、香港などの主要国・地域と相互優遇協定を結んでいる。
[矢野 武 2018年3月19日]