MOS電界効果トランジスタ(読み)モスでんかいこうかトランジスタ(その他表記)MOS field-effect transistor

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 の解説

MOS電界効果トランジスタ
モスでんかいこうかトランジスタ
MOS field-effect transistor

MOS構造を利用した電界効果トランジスタMOSFETとも呼ばれる。 1960年にベル電話研究所の D.カーンと M.M.アタラによって発明された。半導体としてはシリコン (ケイ素) が用いられている。p型シリコンを例にとると,ゲートに正バイアスを印加すると酸化膜を介してゲート直下の半導体表面に負の電荷すなわち電子が誘起される。半導体表面の電子捕獲中心 (トラップ) 密度が小さければ,この電子は半導体表面層をn型の導電性を示す反転層に変え,電子はこのチャネルを通ってソースからドレインへ流れることができるようになる。ゲートに印加する電圧の小さな変化によってドレイン電流を大きく制御できるので増幅作用が現れることになる。半導体表面の電子トラップ密度が大きい場合,ゲート電圧によって誘起された電子はこの電子トラップに捕獲され,自由に動くことができないのでチャネルを形成することができなくなる。シリコンの場合,酸化膜とシリコンの界面の電子トラップ密度が非常に小さいので MOSFETが実現された。現在ではゲート電圧が0の場合チャネルが存在しないものと存在するものを自由につくりうるようになっている (エンハンスメントおよびディプレッション型 MOSトランジスタ) 。入力インピーダンスは容量性で低周波では特に大きく 1010~1015Ω 程度である。双極型 (バイポーラ) トランジスタに比べ素子構造が簡単で微小化が容易なうえに,素子間の電気的分離も容易であるので,演算速度よりも,大きな集積度を要求するような集積回路に大量に使用されている。ただし演算速度はバイポーラには及ばない。単体の素子としては低雑音増幅用,高周波高出力用のものが開発されつつある。チャネルの長さ (ゲートの長さ) が短いほど高周波まで増幅できるが,通常ゲート長は2~5μm程度である。

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