翻訳|trap
(1)わなとか落し穴の意味だが,石油地質学では石油が集積されるような地質条件を備えた場所をいう。石油は一般に水よりも軽いから,地層中を上方へ移動する。その移動を妨げるなんらかの異常が存在すると,石油はそこに停滞,集積して油田が形成される。移動しようとする石油が引っかかって進めなくなる場所という意味でトラップという。トラップは,構造トラップ,層位トラップおよび両者の組合せトラップに大別される。褶曲,断層などの地質構造において油田が形成されるのが構造トラップである。このうち最も重要なのは褶曲運動によって形成される背斜トラップである。世界全体の油田数あるいは埋蔵量のなかで背斜トラップの油田が占める比率は85~90%もある。世界最大の油田,サウジアラビアのガワール油田,世界最大のガス田,ロシアのウレンゴイ・ガス田はいずれも背斜トラップである。層位トラップは層序または岩質の変化によって形成された油田である。砂の尖滅トラップ,礁トラップのような初生的層位トラップと,不整合トラップのような二次的層位トラップとに区分される。層位トラップの代表的油田としては,砂の尖滅トラップによるアメリカのイースト・テキサス油田,礁トラップによるメキシコのポサリカ油田,不整合トラップによるアラスカのプルドー・ベイ油田などがある。さらに各種の組合せトラップの代表的油田としては,砂の尖滅+断層トラップのベネズエラのボリーバル・コースタル油田,礁+背斜トラップのアブ・ダビーのマーバン・ブハッサ油田,砂の尖滅+背斜トラップのアメリカのパンハンドル油・ガス田などがある。
執筆者:加藤 正和(2)液体,気体,蒸気などを輸送する配管系から,その主要流体とは異質または異相の流体のみを自動的に排出する弁。具体的には,水配管からの空気排除を目的としたベント,空気配管からの凝縮水の排除を目的としたエアトラップ(空気トラップ),蒸気配管からの復水の排除を目的としたスチームトラップ(蒸気トラップ)などがある。自動排出の原理は,排出する流体が一定量に達すると,密度差を利用して弁を開放するものが多い。スチームトラップのうちフロート式の構造を図に示す。復水が一定レベル以上に達すると,球状のフロートが浮き上がり,排出口を開いて復水を排出する。レベルが下がるとフロートが沈下し,排出口が閉じられる。排出口はつねに復水レベル下にあり,蒸気が直接排出されることはない。上部のふたに取り付けられたバイメタルと空気抜き孔は,冷えたときに侵入した空気を排出するためのもので,熱い蒸気が入り込んでバイメタルが変形し孔をふさぐまで,ベントの役割を果たす。
なお,下水の排水などにおいて,管部をS字形やU字形に曲げ,その部分にたまる水によって悪臭の逆流を防ぐものもトラップという。
執筆者:大橋 秀雄
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
【Ⅰ】気体の流路に冷却部または吸着剤などを用いて,蒸気を捕そくする作用をするものをトラップという.たとえば,拡散ポンプと高真空部との中間にトラップを入れて,拡散ポンプの作動液の蒸気を捕そくして,逆拡散を防ぐと,よい高真空が得られる.トラップにはガラス製や金属製のものがあり,寒剤としてドライアイス-アセトン,液体窒素などがよく使用される.吸着剤を用いるトラップとして,活性炭,活性アルミナ,人工ゼオライト,モレキュラーシーブなどが用いられる.ガスの種類により還元金属はくを用いることもある.また,液体の流路から重い液体や固体を分離する装置もトラップとよばれる.【Ⅱ】スチーム配管の中途または末端に置いてドレン(drain)を抜き,必要があればドレンを給水に戻して空気を抜くもので,ベロー型,フロート型,上向バケット型,下向バケット型などの種類がある.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報
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…建物の排水設備に要求される基本的な性能としては,不用な排水を静かにかつすみやかに敷地外の公設の下水道などに排出すること,下水管内の悪臭ガスが建物内に侵入しないようにすることなどがある。このガスの侵入を防止する目的で各器具に設けられるのがトラップである。洗面器の下で排水管がU字形に曲がっているのはその例で,この部分につねに水(封水という)が存在するようにして悪臭の逆流を防止する。…
※「トラップ」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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