バイアス(読み)ばいあす(英語表記)bias

翻訳|bias

日本大百科全書(ニッポニカ) 「バイアス」の意味・わかりやすい解説

バイアス
ばいあす
bias

増幅回路変調回路などに用いる電子管やトランジスタに動作の基準を定めるため、制御電極に定常的に加える直流電圧バイアス電圧は電子管やトランジスタなどに入力信号がないときの安定値となる。この値を電子管の陽極電流またはトランジスタのコレクタ電流が最大電流の半分程度流れる点に設定するのをA級増幅、電流が流れ始める点に設定するのをB級増幅、全然電流が流れない点に設定するのをC級増幅といい、増幅しようとする信号の大小、必要とする出力の大きさ、波形ひずみ許容の程度、あるいは入力が搬送波であるか被変調波であるかによって、適した級のバイアス値を選択する。バイアス電圧は電子管では制御格子に負の電圧として与える。トランジスタでは種類によってコレクタに加える電圧の極性が異なるが、コレクタに加えた極性と同じ極性のバイアス電圧を与える。

 テープレコーダーではひずみや雑音の少ない録音を行うために録音ヘッドに可聴周波数より高い高周波をつねに加えておくが、これはテープの励磁の度合いを一定にして録音の安定化を図るものであり、高周波バイアスとよばれている。テレビ撮像管では被写体の像に重ねて一定の光で光電面を照らす場合があり、これをバイアス光とよんでいる。

石島 巖]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「バイアス」の意味・わかりやすい解説

バイアス
bias

調査結果における誤差のうち一定の傾向を持った誤差のことをいう。たとえば収入を調査する場合,回答の秘密が保持される保証がないと,税務当局に収入を知られ,税金を課せられることを意識して収入を過少に回答する傾向が出てくる。このようなバイアスの存在に気付かずに,結果をそのまま受け取ると,実態把握という調査目的にかえってマイナスとなるので,十分な注意が必要である。またバイアスは,問いの文面が中立的な表現でない場合などにも起こりうる。数理統計においてのバイアスとは,不偏推定量 (推定量の平均値と真の値とが一致するもの) ではない場合の推定量の平均値と,真の値との差のことをいう。

バイアス
bias

回路に信号を与えて動作させるとき,基準になる点を決めるための電圧を与えておくこと。信号電圧に一定の直流または交流の電圧を加えたりする。真空管のグリッドに加えるものをグリッドバイアスという。トランジスタに関してはベースに加えられ,それぞれの特性曲線での希望する点付近で動作させるために用いられる。この電圧を独立な電源から与えるものを固定バイアス,回路自身の動作電流を利用してつくるものを自己バイアスという。磁気録音ではその特性を改善するため交流バイアスを用いる。

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